『8時だョ!全員集合』最終回の様子 Photo:SANKEI ※掲載写真は本文の内容とは関係ありません
「機械のほうが正確で、効率もいい」――そんな常識に逆らうように、『8時だョ!全員集合』では、金タライを落とすのも、仕掛けを動かすのも、あえて人の手に任せていた。理由は、笑いを左右する「間」は機械では再現できないから。徹底した非効率へのこだわりが、他局には簡単にまねできない「全員集合」の強さを生み出していた。※本稿は、前TBSホールディングスグループ上席執行役員の園田 憲『ドリフターズと全員集合から学んだ流儀』(ポプラ社)の一部を抜粋・編集したものです。
スタッフ全員が「6人目のドリフ」
として番組を作っていた
ドリフが繰り広げる「8時だョ!全員集合」のギャグには、裏方のADとの「呼吸」で成り立っているものが多い。
たとえば山寺のコントで小坊主の志村が鐘をつこうとすると、なぜか鐘が斜めに逃げて鐘がつけないというギャグがある。なんとかついてやろうとフェイントをかけたりいろんなことをするのだが、鐘のほうはすっかり志村をバカにしてるように、絶妙に逃げるのである。
この時の志村さんのリアクションで客席は大ウケだ。この鐘の操作もベテランのADがセットの上で手動でやっている。あまりにも志村さんとの呼吸がぴったりで、新米の僕は感心したものだ。
また、頭上から金タライが落ちてくるオチは「全員集合」の定番だが、これもADがセットの上に潜んで落としている。これを得意とするADがいて、金タライが命中して客が笑えば、まるで自分がウケたように大喜びするのだ。「全員集合」という番組はこういった人々で出来上がっていた。
「全員が、6人目のドリフなんだよね」
高橋プロデューサーは、そうよく語っていた。長さんがやりたいと言ったことを全員がよってたかって実現する。自分が何をすれば番組が面白くなるのか、スタッフそれぞれが自分の「全員集合」と思いながら番組に参加していたのだ。
ドリフは週3日拘束され
1日10時間をネタ作りに費やした
「簡単にはマネできないような違い」(編集部注/「一見して非合理」というのが持続的な競争優位の源泉だと説く経営学者・楠木建氏の言葉)といえば、「全員集合」にまさる番組はないだろう。
ドリフターズが毎週公開生放送で送る、練り上げられた動きの笑い。そのためにドリフは週3日拘束され、ネタ作りとリハーサルに1日10時間かけるのだ。当時でもこの制作プロセスは他に類をみなかった。
練り上げられた動きの笑いを支え、増幅させたのが計算し尽くされた壮大なセットである。それらを動かし、キッカケで上から金タライや水を落としたりするのも、熟練のスタッフ達だ。
笑いは、「間」がすべて。ちょっとキッカケのタイミングがずれたりするだけで、ウケるものもウケなくなるのだ。だからこそ、効率がよく失敗も少ない機械を使うのでなく、すべて人が動かすのだ。
「相手が人間の場合は、どれだけ練習しても間合いが微妙に変わるんです。そうした変化に対応するには、やはり人間が仕掛けを動かした方がいい(注1)」
セットデザイナーの山田はこう語り、これをシャレっぽく「人動主義」と呼んでいた。







