どうすればお金をかけずに、売上や利益をもっと増やせるのか? この切実なお悩みに答えるのが、人気の販促コンサルタント・岡本達彦氏の最新刊『客単価アップ大事典 「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』(ダイヤモンド社刊)です。同書は、「行動経済学×現場目線」で「つい買いたくなる」販促の仕掛けとは何かを言語化した初の書。本書が提示するのは、「お客様の購買行動そのものを変える設計とは?」です。どうすれば、「利益が残る経営」へと変われるのか? 本連載では、『客単価アップ大事典』に収録しきれなかった事例の中から、現場ですぐに導入でき、成果につながりやすい客単価アップの仕掛けを厳選してご紹介していきます。
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普通は「たくさん使う人」が良いお客様なのに、
なぜ節電にお金を払うのか?
普通の商売なら、たくさん商品を買ってくれるお客様ほど、売上が増えます。電力会社も同じように考えれば、「たくさん電気を使ってください」と言ったほうがよさそうです。
ところが、ある電力会社では指定された時間帯に節電し、削減できた電力量に応じてポイントがもらえます。
つまり電力会社は、「電気を使ってくれた人」ではなく、「ある時間だけ、電気を使わなかった人」にポイントを払っているのです。
なぜ、こんなことをするのでしょうか?
実は電気は、「年間でどれだけ使われるか」だけでなく、「同じ時間にどれだけ集中して使われるか」が非常に重要な商品だからです。
問題なのは、電気を使うことではなく
「みんなが同時に使うこと」
例えば、真夏の暑い日の夕方。多くの家庭や会社で一斉にエアコンが使われれば、電力需要が急激に高まります。
反対に、深夜などは需要が大きく下がります。電気は、朝100、昼100、夜100と均等に使われるわけではありません。
ある時間だけ、200、300と需要が集中することがあります。
電力は需要と供給を常に合わせる必要があるため、需要が集中する時間には、それに対応できる供給力が必要になります。
つまり問題は、「今日100kWh使った」ことだけではありません。「みんなが同じ時間帯に使った」ことなのです。
発電量を増やすだけでなく、
需要を減らすという方法がある
需要が急に増えたとき、普通なら、「供給を増やそう」と考えます。
しかし、もう一つ方法があります。それが、「その時間だけ、お客様に使う量を減らしてもらう」ことです。
例えば、午後5時~7時に電力需要が集中するなら、洗濯機を午後8時から使う、電気自動車の充電時間をずらす、エアコンの設定を無理のない範囲で調整する、といった行動をしてもらいます。
ある電力会社では、お客様ごとの過去の使用状況などから算定した標準的な使用量と実際の使用量を比較し、対象時間帯に一定以上削減できれば節電成功としてポイントを付与しています。
つまり、発電量を増やすだけではなく、需要そのものを一時的に小さくすることでバランスを取っているのです。
ポイントで買っているのは
「節電量」ではなく「行動の変更」
ここが販促として面白いところです。
例えば、「午後5時から7時まで節電してください」とお願いするだけなら、「面倒だからいい」「忘れていた」となる人もいるでしょう。
そこで、「節電できたらポイントをあげます」とします。すると、ただのお願いだったものが、「やれば得をする行動」に変わります。
販促の観点から見ると、電力会社がポイントによって促しているのは、単なる節電量だけではありません。
お客様の、「いつ電気を使うか」という行動の変更なのです。
「売る量を増やす」だけが商売ではありません。混雑する時間帯では、お客様の行動を変えてもらうこと自体に価値があるのです。
「使わない」だけでなく
「使う時間をずらす」ことにも価値がある
さらに、この電力会社の仕組みが面白いのは、節電だけではありません。「電気を使用する時間帯をシフトしてポイントがもらえる」という取り組みも行われています。
例えば、普段夜に行っている電気自動車の充電や家事を、指定された時間帯に移動させる。
すると、その時間帯の使用量が増えた分に応じてポイントがもらえます。
つまり、「とにかく電気を使わないでください」ではありません。あるときは、使わないでほしい。あるときは、今使ってほしい。
電力の供給状況に合わせて、お客様に使う時間を動かしてもらうことに意味があるのです。
これは「節約キャンペーン」というより、需要が集中しすぎないようにするための、利用時間の交通整理と考えると分かりやすいでしょう。
設備を増やすより、
お客様に行動を変えてもらう
例えば飲食店で、12時に100人来店して、13時には20人しか来ないとします。このとき、12時の100人に対応するためだけに、席を増やす、厨房を広げる、スタッフを増やす、という方法もあります。
しかし、「13時以降ならドリンク無料」という特典を付けて、20人のお客様に来店時間をずらしてもらえばどうでしょうか。
12時80人。13時40人。と需要を平準化できるかもしれません。
電力会社のポイントも、考え方は似ています。設備側だけでピークへ対応するのではなく、ポイントという小さなコストで、お客様側の行動を変えてもらう。すると、全体を効率よく運用しやすくなるのです。
他のお店でも使える
「混雑しない行動に特典を付ける」設計
この考え方は、電力会社だけではありません。
・飲食店
12時~13時は値引きせず、「13時30分以降の来店ならデザートサービス」とする。値下げで集客するのではなく、空いている時間帯へお客様を移動させる。
・美容室
土日の人気時間ではなく、平日午後の予約にポイントや追加サービスを付ける。お客様を増やすだけでなく、予約が集中している時間から空き時間へ移動させる。
・レジャー施設
混雑日の割引ではなく、空いている曜日や時間帯の来場者に特典を付ける。施設を増設しなくても、既存設備をより均等に使ってもらえる。ポイントは、「たくさん買った人に特典を出す」だけではありません。お店にとって都合のよい行動をしてくれた人に特典を出すという考え方です。
まとめ
この仕組みを販促の観点から整理すると、
・電力需要は時間帯によって大きく変わるため、需要が集中する時間だけ使用量を減らしてもらう
・供給を増やすだけでなく、お客様側の需要を動かすことで需給バランスを調整する
・「節電してください」というお願いを、「節電すると得をする」という行動に変える
・節電だけでなく、電気を使う時間そのものを別の時間帯へ移してもらう
・ポイントという小さなインセンティブによって、大きな設備や供給側だけに頼らず需要を平準化する
という、「たくさん使ってくれた人」に報酬を出すのではなく、「会社にとって価値のある使い方をしてくれた人」に報酬を出す販促の仕掛けなのです。
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
アンケートやマンダラ等を活用して、誰でも売れる広告を作れる手法を体系化する。
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初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
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