どうすればお金をかけずに、売上や利益をもっと増やせるのか? この切実なお悩みに答えるのが、人気の販促コンサルタント・岡本達彦氏の最新刊『客単価アップ大事典 「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』(ダイヤモンド社刊)です。同書は、「行動経済学×現場目線」で「つい買いたくなる」販促の仕掛けとは何かを言語化した初の書。本書が提示するのは、「お客様の購買行動そのものを変える設計とは?」です。どうすれば、「利益が残る経営」へと変われるのか? 本連載では、『客単価アップ大事典』に収録しきれなかった事例の中から、現場ですぐに導入でき、成果につながりやすい客単価アップの仕掛けを厳選してご紹介していきます。

なぜ某語学アプリは、「勉強を休んでも連続記録が切れないアイテム」を用意するのか?Photo: Adobe Stock

毎日勉強させたいのに、
「休んでもいい」のはなぜ?

 某語学学習アプリには、「連続記録」という仕組みがあります。1日でもレッスンをすると記録が伸び、「30日連続」「100日連続」と積み上がっていきます。

 ところが、この語学アプリには、「連続フリーズ」という、一見すると不思議なアイテムがあります。あらかじめ用意しておけば、1日学習できなくても連続記録が途切れません。

 毎日勉強してほしいのなら、「1日でも休んだら記録はゼロ」と厳しくしたほうがよさそうです。それなのに、なぜわざわざ、「休んでも大丈夫」という仕組みを用意するのでしょうか?

 販促の観点から見ると、これは、1日休むことを防ぐのではなく、1日休んだことをきっかけに全部やめてしまうのを防ぐ仕組みと考えることができます。

積み上げた記録がゼロになると、
やる気までゼロになりやすい

 例えば、100日間毎日勉強してきたとします。すると、「ここまで続けたのだから、今日もやろう」という気持ちが生まれます。

 ところが、仕事が忙しかったり、旅行や体調不良などで1日できなかったとします。翌日アプリを開いて、
 100日
 ↓
 0日

 となっていたら、どう感じるでしょうか。

「昨日できなかったから、また1日目からか…」と、一気にやる気を失う人もいるでしょう。

 本来なら、たった1日休んだだけです。学習した100日分がなくなったわけではありません。それでも「連続100日」という目に見える成果が消えると、「もういいか」となりやすいのです。

 そこで連続フリーズによって、

 100日
 ↓
 1日休む
 ↓
 101日目から再開

 という形にします。

 失敗を「終了」にせず、「ちょっとした中断」に変えているのです。

厳しすぎるルールは、逆に離脱を増やす

 継続させるには、「毎日必ずやる」という厳しいルールが効果的に見えます。

 しかし、人は機械ではありません。忙しい日もあれば、旅行する日も、体調が悪い日もあります。

 100%守らなければ失敗になる仕組みでは、一度の失敗が、「もう達成できない」という気持ちにつながります。

 この語学アプリも、少しの「ゆとり」があるほうが継続しやすいという研究を参考に、設計しています。

 つまり、「絶対に休ませない」より、「休んでも戻ってこられる」ようにしたほうが、長く続く場合があるのです。

守りたいものがあるから、また戻ってくる

 連続記録が長くなるほど、お客様の中には、「この記録を失いたくない」という気持ちが生まれます。

 10日より100日。100日より500日のほうが、途切れさせたくない気持ちは強くなります。

 だから、連続記録そのものが継続の理由になります。

 しかし、その仕組みが厳しすぎると、一度の失敗で大切にしていたものを失い、そのまま離脱する危険があります。そこで「連続フリーズ」を用意し、「記録を守る保険」を持たせます。

 すると、「昨日はできなかったけれど、記録は残っている。今日はやろう」と戻ってきやすくなります。

 つまり「連続フリーズ」は、休むための商品ではありません。再開する理由を残しておく商品なのです。

アプリ内通貨を使わせることにも意味がある

「連続フリーズ」をアプリ内通貨で入手できる点も面白いところです。無料で自動的に何度でも記録を守ってくれるだけなら、「休んでも大丈夫」が当たり前になります。

 しかし、自分が貯めたアプリ内通貨を使ってフリーズを用意すると、「せっかく手に入れたのだから、無駄にしたくない」という気持ちも生まれます。

 つまり、

 学習する
 ↓
 アプリ内通貨を貯める
 ↓
「連続フリーズ」を用意する
 ↓
 万一休んでも記録が守られる
 ↓
 また学習へ戻る

 という循環ができます。

 連続記録だけでなく、アプリ内で得たアイテムまで「続ける理由」に変えているのです。

他のお店でも使える
「失敗しても続けられる」設計

 この考え方は、語学アプリだけではありません。

 ・スポーツジム
「毎月8回来店すると特典」という制度で、1回足りなかったら全部失効させるのではなく、「年に2回まで救済月を使える」ようにする。忙しい月があっても、そこで退会する理由を作らない。

 ・スクール、習い事
 連続出席や課題提出の記録を作りながら、体調不良などの場合には「振替権」を使えば継続記録を守れるようにする。一度休んだことを、退会のきっかけにしない。

 ・会員サービス
 毎月利用するとランクが上がる仕組みで、一定回数まで「休会してもランク維持」という権利を付ける。
利用できない期間があっても、それまで積み上げた特典を失わせない。

まとめ

 この仕組みを販促の観点から整理すると、

 ・長く積み上げた連続記録を、一度の失敗で失わせない
 ・「1日休んだ」を「全部終わった」にせず、翌日の再開につなげる
 ・厳格すぎるルールを少し緩めることで、長期的な継続率を高める
 ・守りたい連続記録を残すことで、「また戻ってこよう」という理由を作る
 ・アプリ内通貨で保険となるアイテムを持たせ、アプリ内での行動そのものを継続につなげる

 という、「一度も失敗させない」のではなく、「失敗してもやめさせない」ことで、お客様を長く継続させる販促の仕掛けなのです。

岡本達彦(おかもと・たつひこ)
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
アンケートやマンダラ等を活用して、誰でも売れる広告を作れる手法を体系化する。
業界を問わず即効性が高く、お金をかけずに売上を上げられることから、全国の商工会議所・経済団体などからセミナー依頼が殺到する。
初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』
『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』『「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる!』(以上、ダイヤモンド社)等がある。