どうすればお金をかけずに、売上や利益をもっと増やせるのか? この切実なお悩みに答えるのが、人気の販促コンサルタント・岡本達彦氏の最新刊『客単価アップ大事典 「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』(ダイヤモンド社刊)です。同書は、「行動経済学×現場目線」で「つい買いたくなる」販促の仕掛けとは何かを言語化した初の書。本書が提示するのは、「お客様の購買行動そのものを変える設計とは?」です。どうすれば、「利益が残る経営」へと変われるのか? 本連載では、『客単価アップ大事典』に収録しきれなかった事例の中から、現場ですぐに導入でき、成果につながりやすい客単価アップの仕掛けを厳選してご紹介していきます。
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まだ雪も降っていないのに、
「今買わないと高くなる」と言う理由
まだ夏の暑さが残っている時期に、「今シーズンのスキーパスを販売中」という案内を見たことはないでしょうか?
しかも、「◯月◯日を過ぎると価格が上がります」と書かれています。まだ雪が降るかどうかも分からない時期です。
普通なら、「雪が降ってから売ればいいのでは?」と思うでしょう。
しかし、あえて早い時期を一番安くして、待つほど高くなる仕組みにすることで、「今年も行こうかな」と迷っている人に、「買うなら今のほうが得だ」という決断理由を作っているのです。
普通の期間限定セールとは少し違う
例えば、「通常10万円、今だけ8万円」という期間限定セールなら、期間が終わると10万円に戻ります。
しかし、このスキーパスの仕組みでは、「今が安い」だけでなく、「待つと価格が上がる」ことを強く伝えます。
すると、お客様の頭の中では、「今買うべきか?」だけでなく、「今買わずに、あとで高くなって後悔しないか?」という判断が生まれます。
例えば、今なら8万円、来月なら9万円、シーズン直前ならさらに高くなる、と分かっていれば、待つことにも
「1万円高くなるかもしれない」というコストが発生します。
何もしないことが、一番安全な選択ではなくなるのです。
つまり、「今買えば得ですよ」だけではなく、「決断を先送りすると不利になります」という価格設計によって、購入を前倒ししているのです。
雪が降る前に、売上を先に確保できる
スキー場側にとって大きいのが、シーズンが始まる前に売上を確保できることです。
通常なら、
雪が降る
↓
お客様が予定を立てる
↓
来場する
↓
リフト券を購入する
という順番になります。
ところがシーズンパスを夏や秋に販売すれば、雪が降る前から代金を受け取ることができます。スキー場には、リフトやゴンドラの整備、人工降雪設備、スタッフの採用、施設のメンテナンスなど、シーズン開始前から多くの費用がかかります。
早く販売できれば、「雪が降って、お客様が来るまで売上が立たない」という状態を減らすことができます。
つまり早期販売は、安く売っているだけではなく、未来の売上を先に現金化しているのです。
何人来るかも、早い段階で分かる
シーズンパスを早く販売すると、売上だけでなく、「今年どのくらいのお客様が来そうか」という情報も早く手に入ります。
例えば、昨年よりシーズンパスの販売が多ければ、レンタル用品、スクール、飲食店、スタッフ、駐車場、宿泊施設などの需要も増える可能性があります。
逆に販売が弱ければ、早めに販促を強化することもできます。
つまりシーズンパスは、単なる前売券ではありません。未来のお客様を早く確保することで、シーズン中の需要を予測する材料にもなっているのです。
「もう買ったのだから、滑りに行こう」が生まれる
早くシーズンパスを買ってもらうメリットは、シーズンが始まってからも続きます。
例えば8万円のシーズンパスを買った人は、雪が降り始めると、「せっかく買ったのだから行こう」と考えます。一日券をその都度買う人なら、「今日は寒そうだからやめよう」「来週でいいか」となるかもしれません。
しかし、すでにお金を払っていると、「使わないともったいない」という気持ちが生まれます。すると来場回数が増えやすくなります。
来場すれば、食事をする、レンタルを利用する、スクールを申し込む、ショップで買い物をする、宿泊する、といった追加消費も生まれます。
つまりシーズンパスは、リフト券代を先に受け取るだけでなく、シーズン中に何度も来てもらう理由まで先に作っているのです。
「安く買ったから得した」を実感したくなる
早く買ったお客様には、もう一つ心理が働きます。「自分は安い時期に買った」という感覚です。
例えば、自分は8万円で買ったシーズンパスが、後から9万円になったと知れば、「早く買って正解だった」と感じます。
さらに価格が上がれば、その感覚は強くなります。
これは単に1万円安かったということだけではありません。「自分は良い判断をした」という満足感にもつながります。
その結果、翌年も、「今年も早く買ったほうがいい」と考えやすくなります。
価格を段階的に上げる仕組みは、今年の購入を早めるだけでなく、翌年以降の早期購入まで習慣化させることができるのです。
他のお店でも使える
「待つほど価格が上がる」設計
この考え方は、スキー場以外でも使えます。
・セミナー、イベント
「早期申込3万円」「◯月以降4万円」「開催直前5万円」と段階を作る。単に締切を設けるだけでなく、申し込みを先延ばしするほど価格が上がる仕組みにする。
・旅行、ツアー
出発日が近づくほど値下げするのではなく、「早期予約価格」「通常予約価格」と段階を作り、早く予定を決めてもらう。参加人数を早く把握でき、ホテルや交通手段も手配しやすくなる。
・年間会員、スクール
翌年度の会員権や年間コースを、「○月までの継続ならこの価格」「それ以降は通常価格」とする。まだ次年度が始まる前に、継続客と売上を先に確保する。
まとめ
この仕組みを販促の観点から整理すると、
・「今買うと安い」だけでなく、「待つと高くなる」という損失を作り、購入の先送りを防ぐ
・シーズン開始前に未来の売上を先に確保する
・早期の販売数から、シーズン中の来場者数や需要を予測しやすくする
・一度シーズンパスを買ったお客様に「使わないともったいない」という気持ちを生み、来場回数を増やす
・早く買った人に「安く買えて正解だった」という成功体験を作り、翌年も早期購入を促す
という、「安売りして早く売る」のではなく、「待つほど不利になる価格階段」を作ることで、未来の売上とお客様を先に確保する販促の仕掛けなのです。
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
アンケートやマンダラ等を活用して、誰でも売れる広告を作れる手法を体系化する。
業界を問わず即効性が高く、お金をかけずに売上を上げられることから、全国の商工会議所・経済団体などからセミナー依頼が殺到する。
初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』
『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』『「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる!』(以上、ダイヤモンド社)等がある。




