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なぜスマホメーカーは、製品を売った後「使い方教室」を無料で開催するのか?Photo: Adobe Stock

売った後なのに、
なぜ無料で時間をかけて教えるのか?

 あるスマホメーカーでは、使い方教室を無料で開催しています。

 初心者向けからクリエイティブな使い方まで、さまざまなセッションがあります。普通なら、スマートフォンやタブレットを販売した時点で売上は成立しています。

 それなのに、なぜ店舗のスペースやスタッフの時間を使って、無料で使い方まで教えるのでしょうか。

 実はこれ、商品を売った瞬間をゴールにせず、「使いこなせた」という成功体験を増やすことで、次の購入につなげる仕掛けと考えることができます。

高機能でも、
使えなければ「高い買い物」になる

 例えば高機能なスマホを買っても、電話、LINE、ネット検索、写真を撮る、くらいしか使っていなければ、「こんな高い機種じゃなくてもよかったかも」と感じるかもしれません。

 商品にはたくさんの機能があっても、お客様が使わなければ、その価値は存在しないのと同じです。

 反対に、「写真の撮り方を覚えた」「動画編集ができるようになった」「仕事で便利に使えるようになった」という経験が増えれば、「これを買ってよかった」という評価に変わります。

 つまり、重要なのは、高機能な製品を作ることだけではありません。お客様自身に、その価値を実際に体験してもらうことなのです。

「使い方が分からない」を、
買った後の後悔にさせない

 高額商品では、購入後の不満が必ずしも商品の性能から生まれるとは限りません。

「設定が難しい」「何ができるのか分からない」「結局使いこなせない」という状態でも、「自分には合わなかった」と判断されることがあります。

 そこで、「分からなければ教えてもらえる」という場所を用意します。すると、「使えないからやめる」ではなく、「使い方を覚えて、もっと使う」へ変えることができます。

 無料教室は、困った人への親切だけではなく、購入後の離脱を防ぐ仕組みでもあるのです。

使いこなすほど、
次も同じブランドを選びやすくなる

 例えばiPhoneで写真の撮り方を覚えたとします。撮影方法だけでなく、写真の整理、編集、共有、他のApple製品との連携なども使うようになります。

 すると次にスマートフォンを買い替えるとき、単純な価格比較だけではなく、「今まで覚えた使い方を、そのまま使いたい」という理由が生まれます。

 別のブランドへ替えると、操作方法を覚え直す必要があるかもしれません。

 つまり、使いこなしてもらえばもらうほど、商品の価値だけでなく、そのブランドを使い続ける価値も大きくなります。無料で使い方を教えることが、長期的には次の買い替えにつながるのです。

教室そのものが、
関連商品の「体験売り場」になる

 さらに面白いのが、使い方を学ぶ過程で、別の商品にも触れることです。

 例えば、「iPadとApple Pencilで絵を描こう」というセッションでは、その名の通りiPadとApple Pencilを使った描画を体験します。

 最初は、「iPadは動画を見るくらい」と思っていた人でも、実際に絵を描いてみれば、「こんな使い方もできるのか」と気づくかもしれません。

 すると、「Apple Pencilが欲しくなる」「より大きなiPadが気になる」「Macとの連携を試したくなる」という新しいニーズが生まれます。

 スタッフが、「これも買ってください」と営業する必要はありません。新しい使い方を体験すること自体が、関連商品の必要性を教えてくれるからです。

商品ではなく、「できること」を売っている

 無料セッションが面白いのは、単なる操作説明にとどまらないところです。

 例えば、「カメラ機能はこちらです」と機能説明をするだけではなく、「もっと魅力的な写真を撮ろう」という形で教えています。

 お客様が欲しいのは、カメラ機能そのものではありません。

「きれいな写真を撮りたい」「子どもの成長を残したい」「旅行の思い出を残したい」「絵を描きたい」「動画を作りたい」という結果です。

 つまり無料教室によって、「この製品にはこんな機能があります」ではなく、「この製品を使うと、あなたはこんなことができます」を体験させているのです。

 商品の価値を、スペックではなく成果として理解してもらう販促になっています。

無料教室が、
もう一度店舗へ来る理由になる

 製品を買ったお客様が、次にショップへ来るのは何年後か分かりません。何もなければ、オンラインだけで済ませる人もいるでしょう。

 しかし、「写真のセッションに参加したい」「機能について知りたい」「子どもとプログラミングを体験したい」
という理由があれば、再び店舗へ来てもらえます。

 店舗へ来れば、「新しいスマホを見る」「タブレットを触る」「スマートウォッチを着けてみる」「アクセサリーを使ってみる」という新しい接点が生まれます。

 つまり「使い方教室」は、商品購入後のサポートであると同時に、既存客をもう一度売り場へ戻す来店理由にもなっているのです。

他のお店でも使える
「売った後に使い方を教える」設計

 この考え方は、スマートフォン以外でも使えます。

 ・カメラ店
 カメラ購入者向けに、「初心者写真教室」を無料開催する。撮影が上達すればカメラへの満足度が上がり、レンズや三脚などの関連商品も必要になる。

 ・調理器具店
 高級な包丁や調理家電を購入した人に、「使いこなし料理教室」を無料提供する。使う頻度を増やし、関連する調理器具や食材の購入にもつなげる。

 ・住宅設備会社
 設備を販売した後に、「光熱費を抑える使い方」「お手入れ方法」などを無料で教える。購入後の満足度を高めながら、点検、消耗品交換、次の設備相談につなげる。

まとめ

 この仕組みを販促の観点から整理すると、

 ・製品を使いこなしてもらい、「買ってよかった」という成功体験を増やす
 ・「使い方が分からない」という理由による購入後の不満や離脱を減らす
 ・使い慣れるほど、次の買い替えでも同じブランドを選びやすくする
 ・新しい使い方を体験させることで、関連商品の必要性を自然に気づかせる
 ・無料セッションそのものを、既存客がもう一度店舗へ来る理由にする

 という、「売った後に無料で教える」のではなく、「使いこなせるほど商品価値を高く感じてもらう」ことで、次の商品まで売れやすくする販促の仕掛けなのです。

岡本達彦(おかもと・たつひこ)
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
アンケートやマンダラ等を活用して、誰でも売れる広告を作れる手法を体系化する。
業界を問わず即効性が高く、お金をかけずに売上を上げられることから、全国の商工会議所・経済団体などからセミナー依頼が殺到する。
初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』
『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』『「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる!』(以上、ダイヤモンド社)等がある。