「不満があるなら言ってくれればよかったのに」「いや、態度で気づいてほしかった」。カップルの別れでありがちなすれ違いです。では、これはどちらが悪いのでしょうか。本記事では、書籍『言語化だけじゃ伝わんない――絵を描くように「考える・伝える」技術』をもとに、ビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「言ってくれなきゃわからない」は正しい?
恋人から突然、別れを告げられた。
そんなとき、
「なんで?」
「もっと早く言ってよ」
と思うのは当然でしょう。
「言ってくれなきゃわかんないよ」というわけです。
でもフった側は実は、不満を察してほしくて動作で示していたはずなのです。
それに、その人は気づかなかった。
これは、雨雲が出ていても雨が降ることに気づけないのと似ています。
「雨が降るって言ってくれなきゃわかんないよ」とスネるようなものです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
「言ってくれなきゃわからない」は、たしかに正論です。
でも、コミュニケーションは言葉だけで行われているわけではありません。
返事がそっけなくなった。
会話が減った。
一緒にいても楽しそうではない。
そんな変化も、相手から発せられている「メッセージ」です。
「言語化を待つ」のも危険
でもそれは「ただ単に観察が足りていないだけ」の可能性もあるのです。
言い換えると、天気予報を過信して、空を見るのをやめるようなものです。
だから天気予報が外れたら、雨に降られてずぶ濡れになるかもしれません。
「雨が降りそう」と伝えてもらわないと、傘を持って行かない。
誰かに「言語化」してもらわなければわからないということです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
この「天気予報」の比喩は重要です。
天気予報を見ることは大切です。
でも、外を見れば真っ黒な雲が広がっているのに、「予報では晴れだから」と傘を持たずに出かけるのはおかしい。
人間関係も同じです。
相手の言葉は大切ですが、同時に「相手をよく見る」必要があります。
「最近、なんか様子が違うな」
そう気づくことも、コミュニケーション能力のひとつなのです。
では、どっちが悪かったのか?
答えは、「どちらか一方」とは限りません。
一方は、「言語化のスキルの不足」。考えたことを言葉にできなかったのです。
もう一方は、「観察のスキルの不足」。目でものを見ようとしなかった。もしくは、目では見えていたのに、メッセージを読み取れなかったのです。
言葉で伝えることと、言葉以外の振る舞いで伝えることは、実際にはそれぞれを補いあっています。
どちらかが欠けていても、コミュニケーションに支障をきたしてしまうのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
フった側は、不満をきちんと言葉にすればよかった。
フラれた側は、相手の変化をもっと観察すればよかった。
つまり必要なのは、「言語化」か「察する」かという二者択一ではありません。
伝える側は言葉にする。受け取る側はよく見る。
「言ってくれなきゃわからない」も、「それくらい察してよ」も、それだけでは不十分です。
言葉と観察。
その両方を使ってはじめて、人と人とのすれ違いは減らせるのです。
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない――絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。




