「寝ても休んでも疲れが取れない」「なんだかしんどい」「なかなか寝つけない」……。最近、メンタルの不調を訴える人が増えています。ADHD(注意欠如・多動症)で、うつサバイバーのバク@精神科医さんの最新刊『その考え、捨てちゃえば あなたの「思考のくせ」を変える40のヒント』(ダイヤモンド社)は、そうしたメンタル不調から抜け出すための「苦手な人との距離の取り方」や「気持ちをリセットするための方法」などを紹介する一冊。本連載では同書から抜粋・編集して、もっと楽に生きられるようになるためのヒント&解決策をお届けします。

【精神科医のアドバイス】人生のストレスが激減する、すごい事実Photo: Adobe Stock

多くの他人は、
もう二度と会わない人と割り切る

「電車で見知らぬおじさんに舌打ちされた」
「店員さんに冷たい対応をされて、なんかモヤモヤしている」
「ジムで隣になった人に変な目で見られた気がする」

 外来でも、こういう「赤の他人」とのちょっとした出来事を引きずって、しんどくなる方が結構います。

「もしかしたら自分が失礼なことしたのかな。悪いな」
「次に会った時、気まずいな」

 そう、ぐるぐる考えてしまう。

 そんなふうに考えがちなあなたに、徹底的にフラットな事実をお伝えします。

 あなたが今住んでいる場所が極端に人口の少ない過疎地でない限り、その人と、あなたは、おそらく、もう二度と会うことはないでしょう。

 今すぐ悩むのをやめて、脳の記憶からデリートしてしまいましょう。

「いやいや、駅で会うかもしれないし、お店もまた行くかもしれない」

 そう思った方、大丈夫です。考えてみてください。

 都会に住むあなたが過去5年間で出会った全ての赤の他人(コンビニの店員、電車で隣に座った人、街ですれ違った人)のうち、再会した人を何人明確に覚えていますか?

 ほとんどゼロ……もしくは、ほんの数人ではないでしょうか。

 数千人、いや数万人とすれ違っているはずなのに、再会した記憶があるのは、相当強烈な体験をしたほんの数人が思い出せたら多いほうです。

 その人に、再度会ったことはあるでしょうか(しつこい痴漢は除く)。

 こう考えると「通りすがりの赤の他人」とは、確率的にもう二度と会うことはありません。

 そして、これは赤の他人だけの話ではありません。

 退職した会社の人とも、会社の近くという相当特殊な場所以外、ほぼ二度と会いません。私自身、これまで複数の病院で勤務してきましたが、辞めた病院の先生に、街中でばったり再会したことは一度もありません。

 学会など、精神科医が集まる場所で見かけることはあっても、それ以外で偶然会うことは本当にゼロです。これは「思っている以上に日本(そして生活圏)が広い」という単純な事実によります。

 人口1億2000万人の国で、特定の個人と再び偶然遭遇する(その日、その場所、その時間に居合わせる)確率は、宝くじに当たる確率レベルに低いと思いませんか。

 こう考えると、退職した会社の同僚、卒業した学校の同級生、引っ越し前の近所の人も、全員ほぼ「二度と会わない人」のカテゴリに入ります。

人間の記憶は、とてもいい加減

 ここで、さらにとっておきの真実をお伝えします。

 あなたが「やらかした」と思っている過去の出来事も、直接やられた相手はともかく、周囲は、ほぼ完全に忘れています。

「飲み会で失言してしまった」
「会議で頓珍漢(とんちんかん)なことを言ってしまった」

 夜中に思い出して「うわー!」となるあれ、相手は全く覚えていません。

「ぶつかりおじさん」レベルのインパクトでもない限り、人の記憶には残りません。

 こう考えると、普通に生きている人が、人の記憶に強く残るやらかしをすることなんて、ほぼ不可能です。

 二度と会わない人、覚えてもらっていない人。この事実を腹落ちさせると、人生の体感ストレスが激減します。

 なぜなら「次に会った時のために」と先回りで気にしていた様々な配慮が、全部不要になるからです。

 電車で舌打ちされた相手に、わざわざ次に出会った時に謝る必要はありません。

 街で変な目で見られた気がしても、その場を立ち去るだけで、もう完結です。

 二度と会わない赤の他人に好かれる努力も、嫌われない努力も、全部コスパが悪すぎる行為です。

 それなら「同じことを別の人にしない」という努力にメモリを割くほうが、絶対今後の人生の糧になるんじゃないでしょうか。

バク@精神科医
元内科の精神科専門医
中高生時代イジメにあうが親や学校からの理解はなく行く場所の確保を模索するうちにスクールカウンセラーの存在を知り、カウンセラーへの道を志し文系に進学。しかし「カウンセラーで食べていけるのはごく一部」という現実を知り一念発起し医師を目指し理転後、都内某私立大学医学部に入学。奨学金を得ながら勉学とバイトに勤しみ大学を卒業。医師国家試験に合格。当初、内科医を希望したが医師研修中に父親が亡くなった喪失体験も重なり休職に至る。この時医師になることを諦めかけるが先輩の精神科主治医と出会うことで精神科医として「第二の医師人生」をスタート。精神科単科病院にて様々な分野の精神科領域の治療に従事。アルコール依存症などの依存症患者への治療を通じて「人間の欲望」について示唆を得る。現在は双極性障害(躁うつ病)や統合失調症、パーソナリティ障害などの患者を対象とする開業医として診察にあたる。「よりわかりやすい、誤解のない精神科医療」の啓発を目標に、医療従事者、患者、企業対象の講演等を行う。うつ病を経験し、ADHD(注意欠如・多動症)をもつ医師としてX(@DrYumekuiBaku)でも人気急上昇中。Xフォロワー9.2万人。著書に『発達障害、うつサバイバーのバク@精神科医が明かす 生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』(ダイヤモンド社)、『依存メンタルを力に変えるレッスン』(大和書房)がある。