「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い
夫又は妻の氏を称する」(夫婦同姓)
まず、結婚にかかわるさまざまな取り決めは民法によって定められている。その第750条では、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」とされている。つまり、結婚すると夫または妻のどちらか一方の姓に統一しなければならない、というわけである(夫婦同姓)。
ここから言うと、結婚が行われるごとに、日本の姓の数は夫と妻のA・Bの2つの姓から、どちらか一方の姓(たとえばAだけ)になる。このことで、2つの姓のうちBは消滅して姓の数は1/2になって減っていくことになる。これは逆ネズミ算のような現象だ。
このように結婚するごとに2つの姓が1つに減っていく一方で、今の世の中に一番多い姓は「佐藤さん」と言われている。ここで誰かが結婚相手を選ぶときには「相手の姓」がどうこうという条件ではなく「相手の人柄」だけで決めているとしよう。したがって、結婚のパターンと姓の組み合わせのパターンには決まった法則はなく、ランダムと見てよい。
つまり、佐藤さんがことさら結婚市場で大人気なのではなくても、他の姓に比べると多い佐藤姓の相手と結婚する確率は単純に高いと言える。そして、これが次々と進むと、やがて日本の姓の数は(1/2)×(1/2)×(1/2)……とどんどん減少し、最終的には最も多いと言われている佐藤さんに飲み込まれ、みんなが「佐藤さん」の姓を名のる結果になってしまうのではないか、というものである。
佐藤姓の問題を考えるにあたって筆者は、2023年をスタート時点として今後の日本社会をシミュレーションしようと計算を始めた。そこでは、後に述べるような仮説モデルに基づいて、今後500年以上先まで計算を毎年分繰り返してみたところ、日本の中で佐藤姓が徐々に勢力を伸ばし、その占有率を増加させるプロセスが見えてきた。







