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「挽きたて、打ちたて、茹でたて」。通称「三たて」は、うまい蕎麦の条件として長く語られてきた。たしかに挽いたばかりの粉で打ち、できたてをすぐに茹でた蕎麦はいかにもおいしそうだ。しかし、江戸時代と現代では、蕎麦を取り巻く環境も大きく変わっている。歴史と科学の両面から「おいしい蕎麦」の条件を再定義する。※本稿は、信州大学名誉教授の井上直人『ビジネスエリートのための 教養としての蕎麦』(あさ出版)の一部を抜粋・編集したものです。
「挽きたて・打ちたて・茹でたて」
蕎麦の“三たて”は絶対条件?
そばの世界でよく語られるのが「三たて」です。
挽きたて・打ちたて・茹でたて。
この三つの「たて」が揃ったそばがもっともおいしいとされ、そば好きの間では常識のように語られてきました。
挽いたばかりの粉で、打ったばかりのそばを、茹でたてで食べる。
たしかに理想的に聞こえます。
しかし、この「三たて」には根本的な問い直しが必要です。
有名そば屋が口にしてきた言葉であっても、その前提となる江戸時代の蔵での保存環境は現代の冷蔵管理とはまったく異なるからです。
この「三たて」、実は歴史を紐とくと意外な事実が浮かび上がります。
江戸時代のそば粉は、挽いてすぐに使われていたわけではありません。蔵に保管され、およそ一年ほど寝かせてから使うのが一般的でした。
つまり、当時のそば屋が扱っていたのは「挽きたて」の粉ではなく、蔵の中で熟成、あるいは酸化が進んだ粉だったのです。
一方、現代ではそば粉を冷蔵し、密封して管理することができます。







