石臼でそばの実を挽く様子写真はイメージです Photo:PIXTA

蕎麦屋の品書きで目にする「十割」と「二八」。そば粉100%の十割と、そば粉に小麦粉を加えた二八では、なんとなく十割のほうが「本格的」と感じる人もいるのではないだろうか。しかし、十割なら必ず二八よりおいしいとは限らないという。蕎麦を味わうなら知っておきたい、十割と二八それぞれの魅力を紹介する。※本稿は、信州大学名誉教授の井上直人『ビジネスエリートのための 教養としての蕎麦』(あさ出版)の一部を抜粋・編集したものです。

そば粉100%の「十割」は
なぜ値段が高いのか

 十割そばとは、そば粉100%で打ったそばのことです。つなぎを一切使わず、そば本来の風味をもっとも純粋に味わえる反面、打つのがきわめて難しい。

 グルテン(編集部注/小麦やライ麦などの穀物に含まれる「グルテニン」と「グリアジン」という2種類のタンパク質が、水を吸収して絡み合うことで作られる成分)の助けがない状態で、麺としてのかたちを保たせるには、高度な技術と経験が必要だからです。

 十割できちんとつながるそばを打てるということは、その職人の腕が確かな証です。だからこそ十割そばは値段も高い。技術的な難易度がそのまま価格に反映されています。

 十割そばの魅力は、何といっても香りです。

 小麦粉が入らないぶん、そば粉の香りがダイレクトに立ちのぼる。口に含んだ瞬間の風味の濃さは、二八そばとは明らかに異なります。

 ただし、食感はやや切れやすく、喉越しの滑らかさでは二八そばに一歩譲ることもあります。

 香りの純粋さをとるか、食感の完成度をとるか。