「丸投げした瞬間、思考は止まる」オムロンのAI推進役が明かす、AI活用を「ITベンダー任せにしない」理由オムロン グローバルビジネスプロセス & IT革新本部 デジタル戦略構築部 部長 伊藤卓也さん Photo by Mayumi Sakai

AIを導入すれば、業務は勝手に楽になる――そう思っていないだろうか。ベンダーに頼めば仕組みは手に入るが、伊藤卓也さんは「一度丸投げすると、自分で考える力は二度と戻ってこない」と言い切る。オムロンが全社で挑む「AIZAQ」(アイザック)は、社員自身が課題を見つけ、AIで解決に挑むプロジェクトだ。すでに年間10万時間の削減効果を生みながら、伊藤さんはこれを「まだ通過点」だと語る。その先に見据える組織の姿とは。(ノンフィクションライター 酒井真弓)

AIは「買える」。でも、使いこなす力は自分たちで養うしかない

 オムロンが全社を挙げてAIに取り組む理由は、大きく2つある。

 1つは人材獲得だ。「AIを使いこなせない会社は、優秀な人材に見向きもされなくなる」。伊藤さんが思い出すのは、学生時代の記憶だ。すでにPCを使ったプレゼンテーションが当たり前になっていた当時、OHPを使う教授が2人いた。「従来の手法を続ける研究室を目にし、研究環境を選ぶうえで、時代の変化に対応する姿勢も重要だと感じた」と伊藤さんは言う。

 もう1つは、事業の方向性にある。オムロンは、現場のデバイスから得られるデータと長年培ってきた知見などのデータを突合し、価値ある情報に変換することで課題解決につなげる「GEMBA DX企業への転換」を掲げている。その実現には、オムロン自身がAIをはじめとしたテクノロジーを、さらに高いレベルで使いこなす必要がある。

 だから、人任せにはしない。「一度丸投げした瞬間に、未来永劫、丸投げし続けることになる」と伊藤さん。外部に頼めば仕組みは手に入るが、それを改善し続ける人と組織は育たない。2023年の生成AI導入当初こそ外部パートナーの伴走でノウハウを吸収したが、今は社員が主体となって、課題の洗い出しから実装まで手がけている。

「一度手放すと、自分で考える力は二度と戻ってこないんです」