「AI役員」発案者のキリンホールディングス 経営企画部 木村弥由さん(左)、同部で今後の展開を担う山﨑可南子さん(右) Photo by Mayumi Sakai
AIが人間の仕事を奪うと言われる時代だが、キリンホールディングスは逆張りをした。12の人格を持つという「AI役員」を経営会議に招き入れたというのだ。そんなことをしたら人間の役員の仕事がなくなるのでは?と心配する人もいるかもしれないが、目的は「役員をもっと鍛えるため」。AIに反論されて、なお前へ進めるか。そのとき人間の役員に求められるものは何なのだろうか?(ノンフィクションライター 酒井真弓)
キリンはなぜ、経営会議に「AI役員」を投入したのか
AI役員「CoreMate(コアメイト)」は、経営会議に加わり、論点を投げかけるAIだ。議論をリアルタイムに分析し、経営、デジタル、マーケティングなど異なる専門性を持つ12の人格が、見落とされている観点や議論の足りない点を突く。
人間の役員だけで話していると、「これを言ったら話がややこしくなるな」「そろそろ結論が出そうだな」などと流れを読んで、発言を引っ込めてしまうこともあるだろう。忖度(そんたく)のないAIだからこそ、立ち止まって議論を引き戻すこともできる。
とはいえ、AI役員がズバリ結論を出すわけではない。提示するのはあくまで論点。議論を深め、意思決定を下すのは、人間の役員だ。
投影画面の上に、AI役員による論点が提示されている(キリンホールディングスのサイトより)
発案者は、経営会議の事務局を務める木村弥由さんだ。「従来の経営会議は、起案者の説明に役員が質問する形で進むことが多くありました。一方で、経営を取り巻く環境は複雑になり、求められる情報や専門性も増しています。速く、質の高い意思決定を実現するために、より良い会議のあり方として、インタラクティブに議論できる場にしていきたいと考えました」(木村さん)
そこで木村さんが目をつけたのが、AIだ。膨大なデータをリアルタイムに分析し、過去の情報も丸ごと覚えておける。AI役員の投入に社長や役員からの反対はなく、「面白そうだからやってみて」と自由にやらせてくれたという。
キリンホールディングス 経営企画部 木村弥由さん Photo by M.S.
目指したのは、単なる会議支援ツールではなく、役員と対等に肩を並べる存在。議論を活性化するコアメンバーになってほしい。そんな思いを込めて、CoreMateと名づけた。







