Photo:PIXTA
三菱商事と伊藤忠商事の間で、デジタル戦略の差がつき始めた。伊藤忠がコンサルティングからシステム開発までを網羅する「デジタル事業群」を構築して着実に稼ぐ一方、三菱商事は鳴り物入りで立ち上げたDX(デジタルトランスフォーメーション)新会社を4年で再編するなど戦略のブレが露呈している。長期連載『クローズアップ商社』内の特集『三菱商事「最強伝説」の終焉』の#10では、両社の統合報告書からデジタル戦略の推移を読み解き、両社の明暗を分けた背景に迫る。(ダイヤモンド編集部 大川哲拓)
DX新会社は目立った成果なく再編
デジタル戦略の一貫性に欠ける三菱商事
「当社グループのみならず、日本の産業界全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させていきます」――。2022年の統合報告書でそう高らかに宣言していた三菱商事のデジタル戦略が行き詰まっている。
年に1度作成され、財務などの基本データと共に、投資家に向けて中長期的な成長ストーリーを示す統合報告書には、経営陣の思考や関心が色濃く反映される。
そして近年の三菱商事の統合報告書に、ひそかな変化が起きている。「DX」の単語が大幅に“消えて”いるのだ。
三菱商事と伊藤忠商事の統合報告書(伊藤忠は「統合レポート」)における「デジタル」「DX」などの単語の出現頻度を見比べると、両社の差が顕著に浮かび上がる。伊藤忠が右肩上がりでこれらのデジタル関連ワードを増やしているのに対し、三菱商事は激減しているのだ。
企業の未来をアピールする場に、デジタルに関連する言葉が出てこない。三菱商事がデジタル分野で一貫した成長ストーリーを市場に示せていないことの証左といえよう。
三菱商事はグループの垣根を越えた「産業DXプラットフォーム」の構想を掲げ、21年にNTTと合同でDX推進の中核会社インダストリー・ワンを設立。エムシーデジタル(MCデジタル、19年設立)と共に日本最高峰のIT人材をそろえた陣容でDXコンサル業界に殴り込み、業界関係者からは「まるで宇宙戦艦ヤマトのようだ」と恐れられた。
しかしインダストリー・ワンは目立った外販成果を得られず、25年にひっそりとMCデジタルなどと統合し、エムシーディースリー(MCD3)に再編されている。
対する伊藤忠は18年に発表した中期経営計画で「商いの次世代化」を掲げ、各領域のプロフェッショナル企業を「タグボート」のようにつなぎ合わせる「デジタル群戦略」を展開。システム開発・運用に強い伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)を軸に、「デジタルバリューチェーン」上流にはDXコンサル会社シグマクシスやボストン コンサルティング グループ(BCG)との合弁会社I&Bコンサルティング、下流にはコールセンターのベルシステム24などを自陣に組み込み、着実に成果を上げている。
三菱商事と伊藤忠の明暗が分かれたのはなぜか。次ページでは、三菱商事と伊藤忠の統合報告書を過去10年分さかのぼり、デジタル関連ワードの出現頻度などから見えてきた両社のデジタル戦略の違いを分析。AIを巡る次なる覇権争いの行方を占う。







