「お金があれば、もっと幸せになれる」「仕事で成功すれば、人生は充実する」そう考えたことがある人は少なくないでしょう。しかし、お金や地位を手にしても満たされない人がいる一方で、決して裕福ではなくても幸せそうに生きている人もいます。東大卒業後、コロンビア大学でMBAを取得し、日本マクドナルドCMO、Facebook Japan初代社長などを歴任。51歳から司法試験に挑戦し、57歳で合格した岩下充志氏は、幸福には「外から見える豊かさ」だけでは測れないものがあるといいます。では、「本当に幸せな人」が持っているものとは、いったい何なのでしょうか。『夢をかなえる 勉強の地図』から特別に一部を公開します。
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「お金がある=幸せ」とは限らない
私は森鷗外の『高瀬舟』という小説が好きです。
主人公は、罪人として島流しにされる喜き 助すけ。病気に苦しむ弟の自殺を手助けし、殺人犯として、遠島(島流し)にされる喜助は、お金も地位もない罪人です。
しかし、護送される小舟に乗る彼の様子は、絶望した罪人の表情とは思えないものでした。同船する同心・羽田庄兵衛が「其額は晴やかで目には微かすかなかがやきがある」と感じたように、喜助は不思議なほど清々しい顔をしていたのです。
私は、人の幸福とは、「客観的幸福度」をX軸、「主観的幸福度」をY軸としたグラフで考えられるのではないかと思っています。
ここで言う客観的幸福度とは「お金や地位といった外側から見える物質的豊かさ」であり、主観的幸福度とは「やりがいや充実感といった自分の内側で感じる精神的豊かさ」のことです。
『夢をかなえる 勉強の地図』より引用拡大画像表示
どのゾーンを目指すべきか?
私の周囲にいる有り余るお金を手にした人たちは、客観的な幸福度は高いです。
でもなかには、どれだけ富を得ても「もっと、もっと」と渇望してしまう「足るを知らない」状態だったり、あるいは満ち足りてしまい生きがいを感じられず、幸福そうに見えなかったのでしょう。
これはこのグラフで言う、Bゾーンにあたります。
反対に、『高瀬舟』の喜助は、お金も地位も全くない罪人ですが、過去に過酷な経験をしてきた人物。
だからこそ、島流しの罪人でも安心した暮らしができることや、弟を病気の苦しみから解放できたことで、現在与えられた環境に対して「これで十分だ」と肯定できる「足るを知る」心境ができていた。だから、心の中に充足感を覚え、晴れやかな表情をしていたのです。これはグラフの、Dゾーンにあたります。
BゾーンとDゾーンのどちらが「幸せ」と言えるかは意見が分かれると思います。
しかしAゾーンが一番幸せだということに異論はないと思います。だから、Aゾーンを実現できるのであれば、目指す価値はあると思います。
「物質的な豊かさ」と「精神的な豊かさ」を両方持っている
この点を踏まえると、改めて勉強は、「幸福になるための最高の手段」だと言えるのではないでしょうか。
先述した通り、勉強をやり抜くことによって、お金や地位を得ることができます。つまり、客観的幸福度を高められる。
同時に、勉強は、知的好奇心を満たし、知る喜びをもたらしてくれます。私が司法試験の勉強を通して、生涯続けられる仕事を見つけたように、「生きがい」を授けてくれることもあるでしょう。勉強を通して主観的な幸福度を高められることも間違いありません。
これほど合理的に、両方の幸福に手を伸ばせる(Aゾーンに入る)アプローチは、勉強以外にないと思います。
たとえ宝くじで5億円が当たったとしても、その日を境に「幸せ」になれるかはわかりません。大金で人間関係にヒビが入ったり、仕事を辞めて毎日に張り合いがなくなることも考えられます。
そもそも、「幸せになりたいから」と言って宝くじなどのギャンブルに手を出すのは、あまりにコストパフォーマンスが悪いです。いくらかけても、当たらない確率のほうが高いのですから。
一方、勉強は、やればやるだけ結果がついてくる確実な手段です。しかも、お金という実利にも、生きがいという喜びにも直結していく。
だから私は、まさに勉強こそが、最も理にかなった「幸福追求の道」ではないかと思うのです。






