指を差して怒鳴るスーツ姿の男性写真はイメージです Photo:PIXTA

「上司を出せ!」――住民からそう迫られても、担当者が対応を抱え込んでしまうケースは少なくない。だが、担当者が替わったことで、思わぬ解決策が見つかることもある。では、どの段階で上司に引き継ぐべきなのか。福岡県が導入した「エスカレーションシステム」から、行政のカスハラ対策を考える。※本稿は、大阪経済大学国際共創学部准教授の山谷清秀『クレームvs公務員――「住民の声」というジレンマ』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。

「上司を出せ」で
別の制度が見つかった

 ある部署の担当であるB職員は、窓口に申請方法を尋ねに来た住民に対応しました。その住民の話は要領を得ず、B職員はなかなか理解できませんでしたが、話を聞いていると、Bはその申請の対象外になりそうであると判断し、その旨を伝えました。住民は納得いかなさそうに帰っていきましたが、翌日再度来訪し、昨日と同じように申請方法を尋ねてきました。

 Bは一通り話を聞いた後、やはり昨日同様、その住民は申請の対象外になりそうと判断し、その旨を伝えました。住民はだんだんと口調がきつくなりはじめ、フロアに響き渡る声で「お前じゃ話にならん。上司を出せ」と言いはじめました。しばらくなだめる一方でしたが、ようやく上司が来て再度話を聞いたところ、別の制度が適用されることがわかり、その申請をして住民は満足して帰っていきました。

 もちろんこの文章だけで職員と住民との会話や関係がわかるわけではないのですが、パターンとして、B職員の理解力に問題があった場合、当該住民の説明力や制度の理解に問題があった場合、そしてその両方が考えられます。これは立場を変えるとよくわかります。