B職員からしてみれば、当該住民は「できない」と説明してもわかってくれない、そのうえ何度も要求してくる、まさに悪質クレームです。

 逆に住民の立場から見てみましょう。住民は自分の困りごとを解消したくて来ているわけですから、一応ウェブサイト等で調べものをして、自分が該当しそうな制度を確認してきたわけです。ところが対応した職員は「できない」というだけで、自分の困りごとをどう解消できるかの案内を一切してくれません。住民から見れば、「聞いたことにしか答えない公務員」にみえるかもしれません。

 このようにお互いに「話の通じない人」と認めてしまった状況からカスハラへ発展するケースは決して少なくないでしょう。

役所には「上司を出すな」
という暗黙のルールがある

 筆者は行政現場での苦情対応を研究していくなかで、「上司を出すな」という暗黙のルールが定着していることを何度も認識させられました。住民と接している担当者こそが責任をもって対応すべきである、という背景からそうしたルールが生み出されています。

 筆者の講演の際に、「本当に上司に替わっても大丈夫?」や「気安く上司に替わる職員は、やっぱり職員としてダメなんじゃないか?」といった質問や意見を耳にすることからも、こうしたルールが浸透していることがわかるでしょう。たしかに相談対応や電話対応を面倒がって、すぐ同僚や上司にパスしようとする職員は問題ですし、「仕事を覚える」「経験を積む」という意味でも、相談対応や電話対応から逃れてもらっては困るでしょう。逆にカスハラ対策で「上司に替わらない」ことを定めているところもあります。その自治体特有の経緯もあるとは思いますが、なんとも難しい問題です。

 他方で、その部署に着任して日が浅く慣れない職員のところに、難しい事案を抱える相談者が来たらどうでしょうか。その相談者が対応のもどかしさから怒りの表情を見せ始めても、上司に交替しないケースがあり、それがカスハラに発展することがあります。