「学ばない自由」を求めて大学に入る矛盾

「学ぶ自由、学ばない自由」と言う人がいます。しかし、「学ばない自由」を選ぶのならば、なぜ大学に通うのでしょうか?私の学生には、必死で受験勉強をしてきた反動で入学1年目は遊んでしまったものの、それだけではむなしくなり、勉強し直したと話してくれた人もいます。

 もちろん、長い人生に寄り道をしたり、普段とは違う経験をすることも必要だとは思います。『自分の小さな「鳥カゴ」から飛び立ちなさい』(ダイヤモンド社)でも紹介したように、イギリスのギャップイヤーなどは、学問から離れて自由に人生を楽しむ時間だと言えるでしょう。

 しかし、ここで真剣に考えてほしいのは、結局、「大学とは何をするところなのか」ということです。自分は何をしたいかと真剣に考えるべき4年間かもしれません。また、将来について準備をする時間でもあります。

 残念ながら、高校生までの時間は、受験合格が最優先とされているため、与えられた問題を早く解く力、もしくは正解を暗記することに精力を費やすことが多いのかもしれません。しかし、大学生の間は、より本質的な学問をする機会と考えて、新しいことを知る喜びに出合い、自由で豊かに生きるために必要なスキルを身につけてほしいと考えています。

 アメリカの大学ではよく「批判的思考」の重要性が語られています。それがなければ、世の中で起きていることが自分にどう影響するのかもわからず、場合によっては、「偉い人が言うことだから間違いない。だから、こうするのだ」と受動的な人間になってしまいます。ポジショントーク(自分に有利なように情報を流したり、発言すること)をする人は溢れています。批判的思考がなければ、知らない間にいいように利用されてしまうかもしれません。

「どうせつまらない仕事を一生していくのだから、大学時代はしっかり遊びたい」という学生もいます。しかし、それは果たして事実なのでしょうか?

 私自身の経験からも、面白い仕事は世界に山ほどあることを知っていますし、また、そうした仕事を自らつくり出した人も多く知っています。

 4年間を遊びに費やしたせいで一生自分が納得できない仕事を続けるのか、それとも、将来の夢を実現するために大学生活を有効に使うのか、しっかりと考えてほしいと思っています。


【ダイヤモンド社書籍編集部からのお知らせ】

『自分の小さな「鳥カゴ」から飛び立ちなさい――京大キャリア教室で教えるこれからの働き方』(河合江理子 著)

あなたは出口の見えない努力をつづけていませんか?ハーバード、マッキンゼー、INSEAD(欧州経営大学院)、BIS(国際決済銀行)、OECD(経済協力開発機構)…日本・アメリカ・ヨーロッパ、本物の世界を知る日本人が明かす、国境を越えて生きるための武器と心得。

 


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