日本の公立高校を卒業すると、単身で渡米して、ハーバード大学に入学。その後、INSEAD(欧州経営大学院)、マッキンゼー、BIS(国際決済銀行)、OECD(経済協力開発機構)と渡り歩き、現在、京都大学で、若者たちにその経験を伝えている。日本・アメリカ・ヨーロッパ、本物の世界を知る日本人が明かす、国境すら越えて生きるための武器と心得とは。
ハーバード大学へのきっかけは1枚の張り紙
第1回ですでに書いたように、私がハーバード大学に入学したきっかけは、職員室に掲示された1枚の張り紙でした。
大学受験を控えた高校3年生の秋、アメリカでの留学を支援する「グルー・バンクロフト基金(グルー基金)奨学生試験」の紹介をたまたま見つけたことからつながっていきました。
アメリカの大学は、日本のように大学別の試験ではなく、高校時の成績、課外活動、先生の推薦状、自分についてのエッセイなどが合否を決める重要な要素になってきます。また、その他にも、共通試験であるSAT(大学進学適性試験)を受ける必要があり、留学生に対しては、英語力を見るTOEFLのスコアも要求されます。
私はというと、SATの英語の成績(日本の国語に当たります)は悪かったものの、TOFLEの点数が良かったことや、渡米前に英会話学校で勉強していたこともあり、英語に関する心配はそれほどしていませんでした。
ところが、実際にアメリカに到着すると、食事の注文すら満足にできず、自分の英語の不自由さを痛感します。何を聞かれているのかわからなくなってしまい、ファストフード店では立ち往生。苦い顔をされながら、「早く進め」というジェスチャーをされたことは1度ではありませんでした。