ホルムズ海峡封鎖によるエネルギー危機とAIによる電力需要爆発が迫る日本。「太陽光はもうオワコン」「環境に悪い」という世間の誤解を横目に、賢い投資家は全国の「中古太陽光施設」を急速に買い占めている。原発再稼働も新規火力も困難な今、勝機は新規開発ではなく「既存設備の蘇生(リパワリング)」にこそあった。国の情勢と世界市場を読み解き、時代の先回りで「詰み将棋」を仕掛ける、超実戦的なエネルギービジネスの裏側を『アメリカに訴えられた男 エリート外資系銀行員が嵌められた罠。そして奈落からの復活』(ダイヤモンド社)を上梓した本村哲也氏が明かす。

「ホルムズ海峡危機×AI爆発」で賢い投資家が着々と買い集めるテッパンな物件とは?Photo: Adobe Stock

国策に売りなし

 世界的な経済の状況を見たとき、本村は太陽光発電が非常に将来性のあるビジネスだと考えた。日本のエネルギーのうち石油はほとんどを中東の原油に依存しており、その93%以上がホルムズ海峡を通ってきている。国として極めてリスクの高い状態だ。イランとイスラエルが戦闘状態になってホルムズ海峡が封鎖されてしまうと、一番先に打撃を受けるのは日本だ。ロシアとは天然ガスの開発をしていたが、ウクライナ侵攻でロシアに制裁をかけたため、それも止まりつつある(そして2026年、現実にホルムズ海峡の危機が起こってしまった)。

 一方で2040年には、AIの電力消費増などで日本の電力消費量が1・6倍になるという試算がある。しかし震災の影響で日本では簡単に原発の運転を再開できる状況にはない。CO2排出量削減の世界的潮流があるから新規の火力発電所を造ることも簡単ではない。石炭は当然使えないし、風力発電はベース電源にはなりえない。

 結局、太陽光しかないのだ。しかも今や、世界で最もコストの安い発電方法は太陽光発電によるものになっている。かつては補助金がなければ回らない事業だったが、パネルの効率がよくなり、大量生産によってコストが下がり、独立採算が取れるようになった。太陽光は世界で最も安価な発電方法になっていたのだ。

 日本は民主党政権のときに20年間も固定金額で電力を売れる制度を作り、大盤振る舞いしてしまった。その結果、太陽光発電所の建設バブルとなり、本来設置すべきでない場所にも多く造られてしまった。水害や土砂崩れ、景観の問題など、さまざまな問題を引き起こすことになってしまったのだ。

 太陽光発電自体が悪いのではない。乱開発になってしまったことが問題だったのだ。日本には新規で造れる適切な場所がほとんどない。ということは、今後は既存の太陽光設備を蘇らせようという方向になるはずだ。実際、2026年以降、リパワリング事業は急激に注目を集めるようになっている。

「我々は今、全国の太陽光発電施設をどんどん売買して底地を押さえていっています。新しいパネルに替えるだけで、発電量は大幅に増える。蓄電池の値段もどんどん安くなってきているので、今後は昼間の分を充電して夜売ることができるようになる。国の今のエネルギーポジションを見れば、必ずやらなければいけないのは太陽光施設の再開発・再利用です。新規設備じゃない。そこに気がついてなくて、太陽光発電は環境によくないと言っている人が多い。それはわかった上で、我々はかなり先回りしてビジネスをやっています。私たちからすると、詰め将棋なんです。日本のエネルギーの状態と今後のエネルギー需要と、世界的な情勢を考えたときに、中古の太陽光設備の価値は上がり続ける。将来はエネルギー価格がどんどん上がる。インフレになるわけだから、原油の価格も上がるし、AIやデータセンターによって世界中で爆発的に電力需要が伸びる。そうすると今、安い発電設備を買っておいたら、より高く売れるようになる。そんなに難しい投資ではないと考えていました。実際、その方向性は現在ではより明らかになってきています」(本村氏)

 政府の発表を軽んじている人が多いように思う。しかし国の経済活動は政府がルールを決めて方向性を決めているのだから、それを見て動くのは大前提だ。国が「こういう方向です」と言っているのだから、規制や行政などさまざまなものがそれに向けて動いていく。「国策に売りなし」である。

 逆風が吹くマーケットで勝負しても勝てないのだ。