物価上昇が日常的な話題となっている昨今ですが、ほんの5年ほど前まで日本はデフレの時代が30年間続いていました。しかしコロナ禍における世界的な巨額の財政出動を機に、世界はデフレからインフレへシフトすると本村哲也氏は確信しました。グローバルマクロの視点から「時代の節目」を完璧なタイミングで捉え、マクロ経済の動向を経営戦略へと昇華させたことで、いかにして大成功を収めたのか。本村哲也氏の著書『アメリカに訴えられた男 エリート外資系銀行員が嵌められた罠。そして奈落からの復活』(ダイヤモンド社)より、投資の本質と、変化を勝ち抜くための意思決定の裏側に迫ります。
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インフレとデフレの境界
コロナ禍での財政出動で日本政府は約100兆円を拠出した。アメリカ政府は約400兆円、ヨーロッパ各国も約100兆円を拠出した。世界中で600兆円ものお金が新たに出回ったことになる。ということは、ここから世界はインフレに変わると本村は確信した。世間に出回るお金の量が増えればインフレになる――それは教科書に載っているような基本的な動きだ。
「それまで30年近くデフレの世の中だったので、私が経営する不動産賃貸会社のアプレシアールは家賃収入をベースとした不動産賃貸業をやっていたんです。郊外にアパートを買って、その家賃収入と借入返済の差で収益が上がるキャリー型のビジネスモデルだった。しかし2020年からアプレシアールの不動産投資は、キャリーではなく値上がり益を狙うキャピタル型の投資にすべて変更しました。それまでは郊外の利回り物件しか買っていなかったのに、最も値上がりが期待できる都心の物件を買うようにしたのです。2021年に中央区のタワーマンションを買い、2022年に六本木駅前のレストランビルを買いました。2023年には中野区の大規模一棟マンション、さらには大阪駅前の大規模再開発案件にも大きく投資をした。そうやって都心部の値上がりしそうな物件を手早く買っていきました。この2020年というドンピシャのタイミングに、デフレ環境用のキャリー型トレードからインフレ環境用のキャピタル型の投資に変えているんです。ご存じのように都心のマンション価格はインフレで高騰していきました。だから有限会社アプレシアールは、その後ものすごく儲かっています。まさに完璧なタイミングだったのです」
投資を行う上で、本村は「時間軸の設定」と「利益の源泉」を明確にすべきだと説く。
キャリー型:家賃収入や株式の配当のように継続的に入るインカムゲインを主な収益目的とする投資。
キャピタル型:資産の値上がり益(キャピタルゲイン)を主な目的とする投資。
世の中の投資家は、自分がどちらの手法をとっているのか曖昧なまま投資を行っているケースが多い。ここを整理するだけでも結果は相当変わってくるという。
最近、銀行の人たちに本村はよく聞かれる。
「なぜあのタイミングでインフレが来ることがわかったんですか?」
本村は平然と答える。
「日本は財政出動で100兆円を出しているし、世界でも600兆ものお金を刷ってばら撒いたんだから、インフレになるのは当然ですよ」
グローバルマクロの視点で債券トレードをしてきた本村には当たり前のことに思えたが、普通の人にとってはそうではなかった。2020年がデフレとインフレの境界だったと、みんな今になってようやくわかり始めている。その節目をきちんと理解できているかどうか? マクロ経済を理解した上で、世界の政治経済状況や歴史的視点を経営に反映したことが、その後のビジネスの大成功につながっていったのである。







