「音楽を聴きながら勉強したほうが集中できる」という人もいれば、「静かなほうが勉強がはかどる」という人もいるだろう。
では、実際のところ、音楽を聴きながら勉強すると、学習効率は上がるのか、それとも下がるのか。じつは、音楽が脳の働きや読解力に与える影響については、さまざまな研究が行われている。勉強するときの「音楽の意外な影響」について、『医師が教える 子どもの習慣50の基本』から一部抜粋してお届けする。(ダイヤモンド社書籍編集局)

イヤホンで音楽を聞きながら勉強すると、効率は上がる? 落ちる? どっち?【小児科医が解説】Photo: Adobe Stock

BGMはないほうがいい

 勉強するときにBGMがあったほうがよいのか、ないほうがよいのか、考えたことはありますか? 無音だと気になる方や、「集中できる環境音楽」を聴いている方もいらっしゃるでしょう。

 2020年の研究では、
・「覚醒度(刺激性)の高いBGM」
・「覚醒度の低いBGM」
・「BGMなし」

 の3つの環境で読解の課題に取り組んだとき、
 最も結果がよかったのは「BGMなし」だったということが示されています(11)。

 この研究は、中国の平均年齢24歳の大学院生の男女を3つのグループにランダムに分けて、それぞれの音環境(「覚醒度の高いBGM」「覚醒度の低いBGM」「BGMなし」)のなかで文章を読み、その内容が正しいか誤っているかを次々に回答していくというものです。
 BGMはどちらもクラシック音楽です。

脳のキャパシティを多く使っている

 文章は、
「ボートを漕(こ)ぐには櫂(かい)が必要である」
「ボートを漕ぐには布が必要である」
 などの正文と誤文で構成されており、全部で90問の正誤を次々に回答して最終的な正解数を見ました。

 同時に、参加者の脳波を観測し、N400という外からの刺激に対する脳の電気的反応も見ました。
 N400の反応が高いとき、脳のキャパシティをより多く使っていると考えられています。

 その結果、BGMがないときに正答数が一番多く、N400が低いことがわかりました。また音楽の覚醒度の高い低いに有意差はありませんでした。

 つまり、勉強するときには「BGMなし」が最も集中できる環境ということです。

 ヒップホップ、歌詞のある曲がかかっていると読解力にマイナスに作用することを示す研究も複数出ています(12,13)。

「モーツァルトが良い」と聞いたことがあるけれど?

 別の研究で、モーツァルトの音楽がBGMで流れているときに読解力が上がったというものもあります(14~16)。

 2015年に発表されたイタリアの研究者らの研究では、モーツァルトの「K448(2台のピアノのためのソナタ ニ長調)」、またはベートーヴェンの「エリーゼのために」を健康な若者と軽度認知症患者の両グループに聴かせて同時に脳波測定をしたところ、両グループともアルファ波(記憶、問題解決に関連する脳波)帯域が有意に増加したことが示されました(17)。

 以前から、モーツァルトの音楽で心が整うという結果を示す研究は複数ありますが、マイナスの結果を示す研究も出ているので、モーツァルトが絶対に推し、というわけでもなさそうです。

 一度身についた勉強の習慣は、一生モノです。
 無音の状態で勉強できるクセを早めにつけておけると良いですね。

11 Du M, Jiang J, Li Z Man D, Jiang C. The effects of background music on neural responses during reading comprehension. Sci Rep. 2020;10, 18651. doi: 10.1038/s41598-020-75623-3.
12 Chou PT. Attention drainage effect: How background music effects concentration in Taiwanese college students. J Scholar Teach Learn. 2010;10(1):36-46.
13 Zhang H, Miller K, Cleveland R, Cortina K. How listening to music affects reading: Evidence from eye tracking. J Exp Psychol Learn Mem Cogn. 2018;44(11):1778-1791. doi: 10.1037/xlm0000544.
14 Khaghaninejad MS, Motlagh HS, Chamacham R. How does Mozart’s music affect the reading comprehension of Iranian EFL learners of both genders? Int J Hum. Cult Stud. 2016;488-499. [cited 2026 Jul 31]. Available from: https://www.researchgate.net/publication/303192685.
15 Rashidi N, Faham F. The effect of classical music on the reading comprehension of Iranian students. Theory Pract Lang Stud. 2011;1(1):74-82. doi: 10.4304/tpls.l.l.74-82.
16 Su YN, Kao CC, Hsu CC, et al. How does Mozart’s music affect children’s reading? The evidence from learning anxiety and reading rates with e-books. J Educ Technol Soc. 2017;20(2):101-112.
17 Verrusio W, Ettorre E, Vicenzini E, et al. The Mozart effect: A quantitative EEG study. Conscious Cogn. 2015;35:150-155. doi: 10.1016/j.concog.2015.05.005.
伊藤明子(いとう・みつこ)

赤坂ファミリークリニック院長/小児科医/MD,MPH/BCIA認定ニューロフィードバック認定医
NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事。東京外国語大学卒、帝京大学医学部卒、東京大学大学院医学系研究科修了。医師になる前から同時通訳者として天皇陛下や歴代首相、米国大統領の通訳を務め、現在も医学系会議を中心に活動している。通訳の仕事をしながら2児をもうけたあと、40歳で医学部を受験し、医師に。卓越した英語力を武器に、海外の学術論文から日々最新の情報をアップデートしている。メディア出演も多く、わかりやすい説明と親しみやすい人柄で子どもはもちろん、その親からの信頼も厚い。著書に『医師が教える 子どもの食事 50の基本』(ダイヤモンド社)などがある。