こうした方言に対する否定的な風潮は、方言話者に強いコンプレックスを植えつけました。とくに戦後、地方から集団就職で上京した少年たちの中には、方言をからかわれることで精神的な苦痛を受けて自殺や事件に至るケースもあり、社会問題となりました。

 1980年代に標準語が広く浸透し、共通語として認識されると、方言に対する否定的な見方は弱まっていきました。教育現場でも、方言は「尊重すべき言語」として位置づけられるようになりました。現在の学習指導要領では、方言と共通語それぞれの役割を理解し、尊重することが示されています。また、生徒が地域の民話や伝統芸能、高齢者との交流を通じて方言に触れる機会を持つことも重視されています。

 さらに近年は、共通語と異なる方言の個性や味わいが新たな価値として見直され、広告や商品開発にも活用されています。たとえば福井県の地方誌「URALA」は、「私たち」を意味する方言「うらら」に由来しています。かつて地域で使われていた言葉が一度は衰退しながらも、再び魅力的な言葉として息を吹き返しているのは面白い現象です。

●ここで問題です。次の言葉のなかから方言に由来するものを選びましょう。

Q1

1:うざい
2:せこい
3:けむたい

Q2

1:~じゃん 例)違うじゃん
2:~ってば 例)違うってば
3:~くない? 例)違くない?

Q3

1:きもい
2:チルい
3:だるい

Q4
1:のんびりする
2:まったりする
3:げんなりする

Q5

1:い抜き言葉 例)食べてる
2:ら抜き言葉 例)見れる
3:れ足す言葉 例)飲めれる

Q6

1:むかつく
2:いらつく
3:まごつく

Q7

1:うっかり
2:がっつり
3:ばっちり

Q8

1:あーね
2:ほんとそれ
3:ガチで

方言と共通語が混ざると
新しい言葉が生まれる

 標準語が全国的に普及するにつれて、方言の存在感は薄まっています。しかし今、方言は私たちが気づかないうちに姿を変え、日常会話の中に根をおろしつつあります。

 言語学者の真田信治氏が1980年代に提唱した「ネオ方言」も、そのひとつです。ネオ方言とは方言が共通語と接触し、混ざり合うことで生まれた表現を指します。