スマートフォンを操作するスーツ姿の男性写真はイメージです Photo:PIXTA

「部長は本日お休みをいただいております」「お会計は1580円になります」――。職場や飲食店でよく耳にする丁寧な言い回しだが、実は敬語として不適切なものも少なくない。失礼を避けようとするあまり、かえって過剰になったり、不自然な表現になったりするのはなぜか。つい使ってしまいがちな敬語の間違いを通じて、日本人が「丁寧さ」にこだわる意外な心理を読み解く。※本稿は、文章コンサルタントの前田安正『赤ペンで直す知らない日本語』(幻冬舎)の一部を抜粋・編集したものです。

敬語は相手との「安全な距離」を
保つための道具として使われる

 敬語や丁寧語はもともと身分差や社会的距離、上下関係といった格差を表すための言葉でした。これは、対人関係において「危険な距離」を避け、適切な関係を保とうとする配慮の表れでもあります。現代社会でも敬語は上下関係を表すために用いられますが、日常会話の中で相手を傷つけず「安全な距離」を維持するための道具としても使われています。

 他の言葉と同じように、敬語も社会やコミュニティ内でつねに変化しています。たとえば、特定のコミュニティで「オタク」を「オタクさん」と呼ぶなど、名称を丁寧語化することで、自らが傷つかない距離を確保しようとする手法もみられます。

●ここで問題です。次の文章には誤りがあります。正しく直しましょう。

Q1

「AプランとBプラン、どちらにいたしますか?」

「事務手数料はどちらも一律10%でやらさせていただきます」

Q2

「部長は本日お休みをいただいております」

「ご伝言をお伝えいたしますので、お名前を頂戴してもよろしいでしょうか」

Q3

「なるほどですね。お話を伺って、大変参考になりました」

Q4

「その件については、弊社の担当者より伺っております」

「明日まで会員割引にてご購入できます」

Q5

「打ち合わせ日程の件、承知しました」

「インフルエンザも流行っておりますので、お体をご自愛ください」