「自分は間違っていないはずなのに、なぜか人間関係がうまくいかない」。そう感じたことはないだろうか。一方で、人間関係のトラブルに直面しても、むしろ信頼を深められる人がいる。その秘訣は、「第一声」にあった。『世界の役員が教えてくれたこと――「仕事に追われる人生」で終わらない生き方』が、その答えを教えてくれる。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)
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「周囲から人が離れていく人」の特徴
「いや、私が悪いわけじゃないんだけど……」
「ちゃんと理由があるんだから、わかってほしい」
誰かとトラブルになったとき、そんなふうに考えることはないだろうか。
たとえば、友人との待ち合わせに遅れたとき。「電車が遅れていたんだから、仕方ないでしょ」と説明する。家族に頼まれていた買い物を忘れたときも、「今日は忙しかったんだから」と言い訳してしまう。
もちろん、どちらも嘘ではない。自分なりの事情があり、わざと相手を困らせたわけでもないだろう。
しかし、こうした説明を繰り返していると、相手は「この人は自分のことしか考えていない」と感じてしまう。本人は、事実を正確に伝えようとしているだけだ。だが、相手が求めているのは、事情の説明ではない。
待たされたことを申し訳なく思ってほしい。約束を忘れられて困った気持ちを、わかってほしい。そう感じているのかもしれない。
それなのに、自分の正しさばかり主張していると、相手の気持ちは置き去りになってしまう。
やがて、周囲の人は離れていき、ひとりぼっちになってしまうだろう。
正しい説明よりも「謝罪」を優先する
では、周囲から信頼される人は、こうした場面で何を大切にしているのだろうか。
『世界の役員が教えてくれたこと』では、あるエピソードが紹介されいる。
ある中堅企業のリーダーが、「地方の古民家をオフィス兼宿泊施設に再生する」というプロジェクトを立ち上げた。
当初、役員会では「古い建物なので、解体してみないとわからない部分がある。状況に合わせて予算と工期を柔軟に判断する」という方針で承認を得ていたが、いざ着工すると、柱の深刻な腐朽や地盤の脆弱さが判明し、追加コストは膨れ上がり、当初予算の2倍に。
もしあなたがこんな窮地に立たされたら、どんな言葉が浮かぶだろう。
「そもそも、やってみないとわからないという前提で承認をもらったはずだ」
「この地盤の問題は、事前の調査では絶対に把握できなかった不可抗力だ」
追い詰められたときほど、人は「承認されたプロセス」や「正論」に逃げ込みたくなる。
しかし聞き手の耳には、正しい言葉であっても「保身」にしか聞こえない。
一方で、同じ場面で、役員はこう切り出す。
「まず、今回の件は申し訳ありません。私の見通しが甘く、会社に多大なリスクを負わせていることをお詫びします」
そして一呼吸置いてから、「現状はこうなっています」「原因は大きく3点です」「再発防止として、すでにここまで手を打っています」と続けます。
その場にいる全員が、彼が事前にリスクを説明したうえで、承認を得ていたことを知っています。
だからこそ、一切の弁解を捨てて謝罪した瞬間、場の空気が変わるのです。
周囲は「この人は、予測不可能だった事態もすべて含めて、自分の責任として引き受けたのだ」と直感するからです。
――『世界の役員が教えてくれたこと「仕事に追われる人生」で終わらない生き方』より
周囲から信頼される人は、トラブルが起きたとき、まず相手の気持ちを受け止めようとする。
自分が悪くないことまで認めるという意味ではない。自分の事情を説明する前に、相手が受けた迷惑や不満に目を向けるのである。
たとえば、友人との待ち合わせに遅れたとき。まずは「待たせてごめんね」と伝える。
同じ事実を伝えていても、順番が違うだけで、相手の受け取り方は大きく変わる。
自分の正しさを主張するよりも、相手の気持ちを大切にする。その小さな心がけが、周囲との信頼関係を守ることにつながるのだろう。







