ADHD当事者のなちゅ。さんが、試行錯誤の末にたどり着いた「生きるコツ」を詰め込んだ『ADHDの母が伝えたい 生きづらい女の子が覚えておきたいこと』。同書に深く共感したという「精神科医さわ」氏(『「発達ユニークな子」が思っていること』著者)は、日々の診療で多くの子どもや親と向き合うかたわら、自身も発達特性のある娘たちを育ててきた。その経験から、発達ユニークな子どもを育てるうえで大切な「3つのこと」を聞いた。(構成/藤田美菜子、ダイヤモンド社書籍編集局)
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「それくらいがまんしなさい」は禁句
――さわ先生のお子さんは、ADHDとASDの当事者とのことですが、発達ユニークな子どもを育てるときに大切なことは何だと思いますか。
精神科医さわ(以下、さわ)「普通」に合わせないこと。それと、がまんがしづらい子たちなんだと、親がちゃんと認識することです。
うちの長女は、音がうるさいところや匂いがきついところには行けません。たとえばごはん屋さんとかですね。
あるとき、出かけている途中で小雨が降り出したことがありました。大人だったら「このくらいの雨なら走っていってよ」と思いますよね。うしろから車も来ているし。でも娘は感覚の過敏さがあるので、少しでも肌に水滴が当たるのが無理だったんです。ところが、そのとき私の父は「それぐらいがまんしろ」と言ってしまったんですね。
いわゆる定型発達の子なら、それでいいのかもしれません。でも感覚の過敏さは、その子その子によって違う。「普通」ならがまんできることが、不快で不快でたまらない子もいるのです。なので、がまんさせることだけが正解ではありませんよ、と親御さんには繰り返し伝えています。
あとは、叱らないでください、ですね。
がまんしなくてはならない環境は、全力で避ける
――普段は子どものありのままを受け止めよう、叱らないようにしようと思っていても、周りの目が気になって強く言ってしまう場面もあると思います。先生はそういうとき、どう対応されていましたか。
さわ 子どもには怒りたくないのに、周りの白い目のために怒ってしまって、あとで自己嫌悪になる――そういうことは実際、私にもあったと思います。ただ、長女はなかなか気持ちの切り替えが難しい子だったので、そもそもそうならないように、そうなりそうな場面は避けるようにしていました。
たとえば外にごはんを食べに行って、予想外にお店が煙くさかったり、声の大きい人がいたりしたとき。長女はそういうのが本当に無理で。AirPods(イヤホン)をつけてみたり、いろいろ試したりもしたのですが、それでもダメだったときは、駐車場の車の中で待っていてもらいました。娘にとってはそのほうがラクなんです。大人が2人いれば、お店の人に断って、料理を車まで運んでいくこともできましたし。
映画館でそういうことがあったら、すでにお金を払っていても、「じゃあ帰ろう」と言って帰る。そういう対応は、かなり徹底していましたね。
「理由」がわかれば、ラクになる
さわ 私がなちゅ。さんの本で、めちゃくちゃいいなと思ったのが、「解決はできなくても、理由がわかればラクになる」というところです。
調子が悪いとき、「自分がダメだから調子が悪い」んじゃなくて、原因が気圧や生理やアレルギーにあるのだとわかれば、諦めもつくし、自分を責めずに済む。対処できなくても、「納得」できるだけで、心の負担はぐっと軽くなる――と。
同じことは、子育てにも言えます。
子どものかんしゃくや、わがままのように見える行動に対して、理由がわからないと怒ってしまったり、こうしなさいと言ってしまったりしがちです。でも、「この子は生まれ持った脳の特性的に、がまんが苦手なんだ」という知識が親の中にあるだけで、見え方が変わってくる。
なちゅ。さんがおっしゃるように、それで解決できるわけではないけれど、「ラクになる」んですよね。
かんしゃくは「症状」ではなく「SOS」
――子どものかんしゃくには、どのような理由があるのでしょうか。
さわ かんしゃくは発達障害の症状だと誤解されがちなのですが、そうではありません。発達特性と環境が合わないことで、かんしゃくが起こりやすくなる場合もあります。
かんしゃくが発達障害の症状だと思ってしまうと、「直さないと」「対処しないと」と思ってしまう。そうではなく、何かしらのSOSのサインなんだと親が捉えることが大事です。何が嫌だったんだろう、気温が不快だったのかな、服の肌触りが嫌だったのかな、近くにいる人の顔が怖かったのかな、匂いなのかな、音なのかな、と。
基本的には「原因」がなければ、子どももワーッとはならないと思うんです。ですから、かんしゃくだけにフォーカスするのではなく、その背景を見るくせをつけてほしいと思います。
児童精神科医、精神保健指定医、精神科専門医、公認心理師、医療法人霜月之会理事長
精神科の勤務医として、アルコール依存症をはじめ多くの患者と向き合う。シングルマザーとして2人の発達ユニークな娘を育てている。長女が不登校となり、発達障害と診断されたことで「自分と同じような子どもの発達特性や不登校に悩む親御さんの支えになりたい」と勤務していた精神病院を辞め、名古屋市に「塩釜口こころクリニック」を開業。老若男女、さまざまな年代の患者さんが訪れる。これまで延べ5万人以上の診察に携わっている。









