面談する男女写真はイメージです Photo:PIXTA

「自分はこんなに頑張っているのに、なぜ評価されないのか」。職場でそんな不満を抱いたことがある人は少なくないだろう。だが実際に、私たちは自分の能力や頑張りをどれほど正確に捉えられているのだろうか。「報われていない」という思いに潜む心理を、専門家が解説する。※本稿は、心理学者の榎本博明『被害者意識が強すぎる人たち』(祥伝社)の一部を抜粋・編集したものです。

人は自分を「平均以上」と
思い込みやすい

 人はみんな自己愛が強く、だれにとっても自分は特別なのである。そのため自分を過大評価する傾向がある。

 たとえば、自分も頑張ったけれども同僚も同じように頑張ったといった状況で、両者の評価に差がないと、「なぜ、あんなに頑張ったのに、それが評価されないのだ」といった不満が湧いたりする。じつは、相手も同じように思っていたりする。

 このように自分を過大評価する心理傾向は多くの人に見られるものだが、それをポジティブ・イリュージョンという。

 心理学者ダニングたちは、非常に興味深い研究を行っている。ある研究では、運動能力に関して、60%の人が自分は「平均より上」とみなしており、自分は「平均より下」とみなす人は6%しかいなかった。

 平均を上回る人が60%もいるというのは、統計的にはあり得ないことである。ふつうは、「平均より上」と「平均より下」が2~3割ずつ、残りが「平均並み」という感じになるはずである。運動能力のように比較的客観的にわかりやすい性質に関しても、ここまで自己認知が歪んでいる。

 ましてや欧米社会で強く求められるリーダーシップ能力に関しては、自己認知がさらに自分に都合よく歪んでいると推測される。

 結果を見ると、予想通り、70%が自分は「平均より上」とみなしており、「平均より下」とみなす人はわずか2%しかいなかった。平均を上回る人が70%もいて、平均を下回る人が2%しかいないというのも、現実にはあり得ない。

的外れな被害者意識が
そこらじゅうにうごめいていたりするわけ

 さらに歪んでいたのが、人とうまくやっていく能力についての自己認知である。これは基準がはっきりしないため、実際はうまくやれていなくても自分はうまくやっているという思い込みを抱きやすいと考えられる。