『その仕事、スケールするの?』は、シアトルの巨大IT企業で働く著者・福原たまねぎ氏が、世界一流の同僚から学んだ成果の出る仕事のやり方を明かす1冊です。今回は書籍の発売に先駆け、「仕事ができる人」ほど言わない一言について、本文の内容を特別に公開します。

仕事ができる人Photo: Adobe Stock

タケノコさんに言われた一言

シアトルで働くようになってしばらくしたころ、ぼくはあることに気づいた。

だれも「頑張れ」と言わないのだ。

日本にいたころは当たり前のように飛び交っていた言葉だ。

大事なプレゼンの前には「頑張れ」、締め切りが迫れば「頑張ろう」、追いこまれたら「もっと頑張れ」。

ぼくはその言葉に何度も背中を押されてきたし、なんなら自分でもだれかに言いつづけてきた。

でもシアトルではその言葉がほとんど聞こえてこない。

ある日、ぼくはそれをタケノコさんにそのままぶつけてみた。

アメリカのテクノロジー業界の第一線で25年以上、エンジニアとしてそのマネージャーとして活躍してきたタケノコさん。

シルバー色の髪が肩までかかり、品のいい黒縁メガネがきらりと光る。

いつも落ち着いていて、余計なことを一切言わない人だ。

「アメリカ人って、あんまり『頑張れ』って言わないですよね」

タケノコさんはすこし間を置いてから、こう言った。

「お互いに励まし合うことは大事よ。

でも『頑張れ』というのは、意味のない言葉だと思うの。

だいたいみんな、もう頑張ってるでしょ?」ぼくはそのあけすけなひと言に、思わず笑ってしまった。

たしかにそうだ。

「頑張れ」と言われて、それまで頑張っていなかった人が急に頑張り出すなんてことはほとんどない。

みんなとっくに頑張っている。

その上に「もっと」と重ねたところで、どこかで必ず限界が来る。

だから「頑張ろう」の代わりに、こういう問いが飛んでくる。

「その仕事、スケールするの? (Is this scalable?)」