外資系IT企業の米国本社でシニア・プロダクト・マネージャーとして働く福原たまねぎさん。世界トップレベルの同僚たちを間近で観察するなかで、彼らの強さの正体は、毎日のように繰り返される「短い言葉」と、その裏にある思考法にあることに気づいたという。福原さんの著書『その仕事、スケールするの?』の発売に際して、今回は、世界一流はなぜ「自分で手を動かさない」のか、そのヒントとなる口癖「それ、うちでつくる必要ある?」を紹介する。
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「それ、うちでつくる必要ある?」
シアトルで働きはじめたころ、新しい仕事を任されて「まずは自分でやってみます」と答えたことがある。日本ではそれが誠実さの証だと思っていた。ところが返ってきたのは、まったく別の言葉だった。
“Can we leverage what's already there?”(すでにあるもの、使えない?)
レバレッジ(leverage)。日本では金融の言葉というイメージが強いと思う。でもシアトルでは、これが動詞として毎日飛び交っている。“Let's leverage the existing tool.”(既存のツールを使おう)、“Can we leverage their data?”(あのチームのデータ、借りられない?)。
まず押さえておきたいのは、これが「手を抜く」という意味ではないことだ。この言葉が指しているのは、自分の外にあるものを借りてくる技術のほうだ。
棒と支点さえあれば
レバレッジの語源はlever、つまり「てこ」だ。ここで思い出したいのが、古代ギリシャのアルキメデスの有名な一言。
「十分に長い棒と、それを支える支点さえあれば、地球だって動かしてみせる」
盛りに盛っているようにも聞こえるけれど、理屈としては正しい。てこを使えば、1の力で100の重さを動かせる。
ただし条件が2つある。長い棒と、支点。どちらも自分の体の外にある。
腕力を鍛えて素手で持ち上げようとするのが「10やって10取る」働き方だとすれば、レバレッジは棒を探しにいく働き方になる。
投資の考え方を、仕事に持ち込む
日本でも米国株投資は人気だが、そこで出てくるレバレッジは、正確には「値上がりしそうなものに賭ける」という意味ではない。借りたお金を使って、自分の元手以上の金額を動かすことを指す。自己資金100万円で1000万円分のポジションを持てば、値動きに対するリターンは元手に対して10倍に効いてくる。
逆に、10万円を投じて10万円を回収しても儲けはゼロだ。手数料と税金を引けば、むしろマイナスになる。
シアトルの一流たちを見ていて、ぼくがハッとしたのはここだった。彼らはまったく同じ計算を、仕事でしている。自分の時間という元手は、どれだけ優秀でも1日24時間から増えない。だから他人の成果を借り、すでにある仕組みを借り、過去に誰かが積み上げたものを借りて、元手以上の成果を動かしにいく。



