インキュベイトファンドなしで
いまはなかった
今回は、起業家とメンターの関わり方、育て方、育てられ方について、二つのスタートアップ、MUGENUP(社長:一岡亮大)とietty(社長:小川泰平)がインキュベーター兼投資家であるインキュベイトファンドとどのように成長していったかという例を紹介し、そこから考えてみたい。
米国のメンターは起業家を尊重し、対等の立場で、しかし辛辣な言葉も率直にぶつけることが常識だと本連載で述べてきた。しかし、日本では、メンターと起業家が先生と生徒のような上下関係になったり、逆に起業家が「メンターはうるさいから基本的に好きにやらせてほしい」とメンターを突き放し、発言力に関して起業家上位の形になることが多い。
しかし、これから紹介する2社とインキュベイトファンドの関係性は、筆者が考える理想の関係性に近い。まずは2社の生い立ちから振り返る。
MUGENUPはゲーム会社にイラストなどクリエイティブ素材を提供するビジネスをしている。投資家インキュベイトファンドは株主で、同社でMUGENUPを担当するのは本間真彦氏だ。
iettyは個人と賃貸物件仲介会社をフェイスブックと連携したウェブサービスでつなぐビジネスだ。MUGENUPと同様にインキュベイトファンドは株主で、担当するのは和田圭祐氏だ。
この二人の起業家は共に、ベンチャーキャピタルであるインキュベイトファンドが年二回開催する事業創造支援の合宿イベント、インキュベイトキャンプの卒業生だ。インキュベイトキャンプは、起業家やその予備軍が20人程参加するが、そのうち投票で上位の3つの事業案について、全員でブラッシュアップする。
二人の起業家は口を揃えて「インキュベイトファンドなしで、いまの事業はつくり出せなかった」と話す。