仕事で新しい役割を任されそうになったとき、興味はあるのに、つい断ってしまう。以前からやってみたかったことがあっても、結局いつもの生活を選んでしまう。そんな経験はないだろうか。私たちは、チャンスをつかみたいと思っていても、知らず知らずのうちに新しい可能性を遠ざけてしまうことがある。実は、その背景には、人間の脳の仕組みが関係しているという。そんな脳の仕組みを『すべて本能のせい』から紹介する。(ダイヤモンド社書籍編集局)

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「チャンスを逃してしまう人」は、何が違うのか?

新しい仕事への誘いを受けたとき。
興味のあることを始める機会が訪れたとき。
「やってみたい」と思う一方で、「失敗したらどうしよう」と不安になることはないだろうか。
結局、今のままのほうが安心だと考え、挑戦を見送ってしまう。

もちろん、すべての誘いや機会に飛びつくことが正しいわけではない。
しかし、後になって「あのとき挑戦しておけばよかった」と感じることもあるだろう。

実は、こうした選択の背景には、人間がもともと持っている脳の仕組みが関係しているという。

人間の脳が「新しいこと」を避けたがる理由

『すべて本能のせい』ではそんな脳の仕組みを下記のように説明している。

人間の脳は、慣れた環境と知らない環境を区別し、未知のものに対しては慎重に反応するようつくられています。
危険を察知する扁桃体が潜在的な危険に反応すると、前頭前野はその反応に基づいて行動にブレーキをかけます。
また、脳の報酬系は結果を予測できる状況では効率よく働きますが、不確実性が高い状況では警戒や慎重さも強まるため、不確実な報酬に対しては行動を起こしにくくなることがあります。

人類が狩猟や採集をしていた時代を考えてみましょう。
足を踏み入れたことのない未知の環境には猛獣や毒を持つ生物、危険な地形などが潜んでいる可能性が高く、それに対して慎重であればあるほど生き残りやすかったことは想像に難くありません。
一方で、すでに知っている環境は安全性が確認されており、そこでの行動はある程度予測できていました。
このため、「探索」と「未知回避」のバランスにおいては、過度に探索するよりも、勝手を知っている空間にいたほうが有利だったのです。

「人生でチャンスを逃す人」が選んでしまうこと

ここで注目したいのは、私たちの脳が、未知のものに対して慎重に反応するという点だ。

たとえば、新しい仕事に挑戦する機会が訪れたとする。
うまくいけば、これまでにない経験や成長につながるかもしれない。

しかし、同時に「失敗するかもしれない」「今の環境のほうが安心だ」という気持ちも生まれる。

一方で、慣れた仕事や生活なら、何が起こるかある程度予測できる。
そのため、新しい挑戦によって得られるかもしれないものよりも、今の環境の安心感を優先してしまうことがあるのだ。

もちろん、慎重に判断すること自体は悪いことではない。

ただ、知らないことへの不安だけを理由に挑戦を避け続けていると、結果として新しい可能性を見送ってしまう場合もある。

人生のチャンスを逃さないために

私たちが新しいことに不安を感じるのは、必ずしも意志が弱いからではない。
未知の環境を警戒することは、人間が生き残るうえで役立ってきた仕組みの一つなのだ。

しかし、現代では、未知のものが必ずしも危険とは限らない。

だからこそ、新しい機会が訪れたときには、「本当に危険だから避けているのか、それとも知らないことが不安なのか」と考えてみることも大切だ。

最初から大きな決断をする必要はない。
まずは情報を集めたり、小さく試したりすることで、未知のものを少しずつ身近にしていく方法もある。

慣れた環境にとどまる安心感と、新しいことに挑戦する可能性。
その両方を意識することが、人生のチャンスを見極めるヒントになるのではないだろうか。