『アメリカに訴えられた男 エリート外資系銀行員が嵌められた罠。そして奈落からの復活』(ダイヤモンド社)を上梓した本村哲也氏は、元外資系銀行のトップトレーダーだった。銀行退職後は実業家・投資家となり、経済の動きに対する研ぎ澄まされたカンを活かして今、大きな成功を収めている。彼が経営する4社の時価総額は300億円を超えているという。そんな彼に今後の日本経済の動向について聞いた。(取材/亀井史夫・ダイヤモンド社)

「日本経済はこれから30年バラ色です」。時価総額300億円を築いた元外資系トップトレーダーが日本の大復活を断言する理由

日本経済はこれから30年、バラ色です

――これからの日本の経済についてお伺いしたいんですけども。

本村哲也(以下、本村):日本経済はこれから30年、間違いなくバラ色ですね。米中対立の中で日本はアメリカ陣営、西側陣営の製造拠点にならないといけない。これからはAIであり半導体の時代ですが、結局半導体装置であったりメモリであったり色んな素材産業は日本でしかできない。中国陣営と西側陣営が、特に韓国、台湾、日本という3極でいかにそれを支えられるかという供給合戦をすることになる。

 鉄も日本製鉄がUSスチールを買ったので日本の会社しか作れない。造船も日本の会社や韓国の会社じゃないと作れない。もうアメリカでは作れないんです。

 地政学的な対立で言えば、アメリカは日本がいないと中国と戦えないことが明らかです。地政学的な対立の一番のフロンティアが日本になるので、防衛上も絶対に必要。太平洋に中国海軍を出してこさせないために日本で止めるしかないのです。だから防衛産業は間違いなく今後伸びますよね。

――トランプが最近中国と妙に仲の良いポーズをしていますが、どう捉えていますか?

本村:アメリカが中国に勝てないのがほぼ確定しているので、「お互いうまくやりましょうね」という話だと思いますね。AIの開発競争になった時に、今は電力の差がすごく言われています。アメリカはAIを走らせる電力が足りない。中国は原発をいっぱい作っていて安い電力があるので、最終的にそこで負けるだろうと言われているんです。

 1945年から1989年と一緒ですよね。米ソ対立の時に日本が必要だったから360円にしてあげて、アメリカ側の生産拠点になってきたわけです。生産拠点となった日本が強くなりすぎたから一回潰したけれど、今度は中国が伸びて来たからまた日本が必要になった。単純にそれだけなんです。

 日本が中国側に行ったら大変なので、アメリカは変なことは絶対にしてこないですし、中国側は日本を引き込もうとするので、米ソ冷戦の時と一緒でおそらく日本は米中のインテリジェンス合戦のど真ん中にいる。簡単に言えば日本の奪い合いと言ってもいい状況です。

円安は160円で終わり?

――円安が進んでいる為替は今後どうなっていくと思いますか。

本村:為替は、基本的にはベッセント財務長官とトランプ大統領が「160円以上はダメ、超円安はこれで終わり」と言っている。基本的に為替はアメリカ政府が決めることなんですよ。アメリカ政府は安く物を作らなきゃいけないから円安は許容するけれど、過度な円安になると日本の金利が上がっていき、日本の金利が上がるとアメリカの金利も上がっていってしまう。それが嫌だから止めろという話になったので、160円で超円安は終わりです。「じゃあ円高になるんですか」と言われても、これは分からないです。ただ、日本は生産拠点にしなきゃいけないので、めちゃめちゃ円高にするということはないです。過度な円安がどんどん進む局面は終わったので。170円、180円になることはないです。

――なるほど。

本村:「じゃあ120円になるんですか」と言われますが、それはマーケットが決めることなんですよ。160円から170円、180円にならないんだったら、トレーダーなら円安のポジションは取らず、円高にポジションを取り始めますよね。円高のポジションになったら反動で150円、140円ということはあり得るし、「でもそれはやりすぎだよね」というせめぎ合いになる。これから140~160円あたりになるのか、120~160円になるのかはマーケットが決めることなので分からないです。

――ちょっと不思議だったのは、円安にアメリカが介入してきたということです。

本村:私もかなりびっくりしました。アメリカは長期金利の上昇をすごく懸念しています。結局、円安になって日本が介入すると米国債を売るので、それが嫌なんですよ。今、米国債は日本政府が200兆円持っていて、中国をはじめBRICsの国はドル安になるから全部売っていっているんですよ。売っているからどんどん長期金利が上がっていて、これで日本にまで売られたらとんでもないことになってしまう、ということです。

――なるほどね。

本村:だから、もう160円を恒常的に超える円安は極めて厳しいです。プラザ合意と一緒です。ただ、それが140円になるか120円になるかは分からない。今分かっていることは「160円以上の円安はアメリカ政府が認めない」ということなので、それに向かって市場が適応を探していく感じです。