給料の上昇は遅効性がある。国が低所得者に還元すべき

――今世の中がインフレになってきて、給料も大企業は徐々に上がっていますけど、全然上がっていない人もいるじゃないですか。その人たちは不満たらたらだったりするんですけど、低所得層も徐々に上がっていくんでしょうか。

本村:もちろん。給料の上昇は遅行性があるので、当然大企業から上がっていって中小企業にだんだん波及します。最低賃金も上げているので、全員に恩恵がないわけではないんですよ。ただ実質金利が今マイナス2%くらいなので、給与が2%くらいしか上がらない人もいるわけですね。2%しか上がらない人は、数字上は同じでも毎日買うものが値上がりしていると痛いじゃないですか。マクロ経済上は実質賃金が上がっていても、感覚として毎日買うおにぎりの値段が上がっている方がダメージが来るので。

――そうですね。

本村:だからインフレって、低所得者層にきついんですよ。インフレになると、すべての国の与党は選挙で負けるわけですよ。今回アメリカの共和党も中間選挙までインフレにしたくなくて何とか抑えようとしていたけれど、インフレになってきているので負けるんじゃないかと言われています。すべての与党はインフレになると基本的には選挙で負けるので、インフレは嫌だと。だからそれを退治しなきゃいけない。一方で高市政権は結構リフレ政策寄りなので、日銀の利上げもビハインド・ザ・カーブと言って本来よりもゆっくりやりますと言っていたわけです。それをベッセントに怒られてしまったので、半年に1回のペースからもっと急ぐ形になったわけです。

――なるほど。

本村:利上げは年内もう1回、12月はあるかな、3ヵ月に1回くらいにするのかなと思っていましたが、ベッセントに相当言われたんだと思いますよ。日銀の植田総裁はあれからすっかり変わって「連続利上げは全然いきます」と言っているので、だいぶ変わると思います。日銀の金利は1.5%までやるかなと思っていましたが、今回の話で2%はいくでしょう。2%から2.5%くらいまでは上げるんじゃないかと。

――この30年のことを考えるとびっくりですね。

本村:ちょうど私が債券トレーダーになったのが1996年で、3%が終わった時だったんですよ。ちなみにその時アメリカの金利は7%です。今5.5%になったと言っていますが、30年前もそういう世界だったんです。ようやく金利のある正常な世界に戻ってきただけなのです。

――まあそうですよね。

本村:当然、30年のデフレから正常なインフレになる過程である程度のフリクションが起こるのはしょうがないです。マーケットが行き過ぎることはありますし、一時的に給料が上がる順位に差が出るのもしょうがない。優位に変化が起こる人と緩やかにしか起こらない人が出てきてしまうので、残念ながらどんな政策を打っても低所得者の方がインフレの煽りを受けてしまいます。

――そうですよね。

本村:通常そういうインフレの時って税収がめちゃくちゃ上がるので、上がった税収を低所得者に配るというのが基本的な考え方なんですよ。減税したり給付金を配ったりするのが本来の政府のやり方です。今回消費税を1%というのもやっていますが、一応経済学通りなんです。ただ日本は税収が増えている割に撒いている額が少ない。今年の税収は90兆円くらいまで行きますが、撒いているのは所詮4兆円じゃないですか。リーマンショックの後の頃は税収が40兆円を切っていたことを考えると、もう倍以上になっているんですよ。それなのに全然ばら撒いていないから、みんな重税感があるのは当然です。本来は財務省がそれを還元していかなきゃいけないんですよ。

株価はまだまだ上がる。インデックスで長期投資しかない

――税金を下げるという話になると、すぐ「財源が」と言い出す人たちがいますよね。

本村:財務省の言っていることをそのまま書いている新聞がいっぱいいるので(笑)。財源も何も、増収で毎年これだけ増えているんだから。名目GDPが増えていくということは税収も一緒に増えていく。名目GDPは700兆円くらいまで来ましたが、そのうち1,000兆円まで行くと思っているので、税収も楽々100兆円は超えてきます。あとは政府次第ですね。インフレの恩恵を受けられない人にある程度還元するのは政府の役割なので、それをどうするかという議論をした方がいいと思います。

――株価は以前に比べたらびっくりするくらい上がっていますけど、まだまだ上がりますか。

本村:まだまだ順調に10万、20万、30万と行きますよ。これも50年や100年の株の相場グラフを見ていただければ分かるんですが、基本的にすべての先進国は緩やかなインフレなので、株価は緩やかに上がっていくものなんですよ。住宅価格もそうです。どの国の50年、100年のチャートを見ても必ず右肩上がりで、インフレ率以上のパフォーマンスを出します。インフレ率がだいたい2%だと、リスク資産はだいたい7~8%上がっていく。株も不動産も平均値は7、8%で上がっていくんです。たまたま都心のマンションが25%など極端に上がってしまったので今は調整しているだけで、平均すれば7、8%に収斂していきます。だからインデックスを買って置いておいてください、と。

――なるほど。

本村:ガチャガチャ売ったり買ったりしないでください、ということです。もうインデッククスで長期投資、積立投資しかないということですよ。