未来をイメージさせる通信機といえば、リストウォッチ型の携帯電話を想像する方も多いことだろう。SFやスパイ映画などに登場し、主人公の手首で輝くその姿は、子供時代の憧れのひとつだ。
しかし実際には、こうしたタイプの携帯電話は一向に根づく気配がない。これまで同様の製品がなかったわけではない。例えばかつては、NTTドコモによる腕時計型PHS「WRISTOMO(リストモ)」などもあった。また、韓国LG Electronics社などは、現在でも積極的に、リストウォッチ型の携帯電話を発表している。
現実的に考えれば、携帯電話が腕時計型になる必然性は薄い。片手をあげたまま話し続けるのは負担であろうし、不自然だ。さらに通話内容が周りに漏れてしまうリスクもある。それでも腕時計型携帯電話への期待を抱かずにいられないのは、携帯電話が、より“ウェアラブル”であってほしいという願いからだろう。
ビジネスシーンでは欠かせない携帯電話だが、案外と使い勝手が悪い場合も多い。まず、着信から通話までに多くのアクションを要する点。鞄やスーツのポケットから取り出す手間は、例えば満員電車の中や商談中などでは、ことさら煩わしく感じるものである。そしてもちろん、両手がふさがっていては使えない。
新たに加わった09年モデル。対応携帯機種は限られるので、購入の際は必ずご確認を。 |
そんな携帯電話の不便さをフォローしてくれるのが「アイバートM」だ。同機は、Bluetooth機能を利用して、携帯電話と接続し、通話着信、メール着信、最新ニュース配信などを、振動と液晶パネルの発光とで通知してくれる腕時計。全角70文字までのメールを手元で読むことが可能で、着信メールは10件まで保存することができる。
その他、意外に便利そうなのが様々なリモート機能である。着信を保留・拒否できるほか、アラームやタイマー音を止める、マナーモード等に切り替える、さらには電波状況やバッテリー残量を確認することもできる。面白いところでは、携帯のカメラのシャッターをリモート操作で切ることも可能だという。
近年では、携帯電話を時計代わりに使っているユーザーが多い。そんな中で、腕時計ならではのスマートさを活かして、携帯との連携を目指す「アイバートM」。それはまさに、「コロンブスの卵」的な逆転の発想だ。携帯市場に限らず、従来の技術やアイテムが、新しい技術やアイテムの登場で縮小を余儀なくされてしまうケースは多々ある。そこからどう生き残っていくか――「アイバートM」は、そのヒントを示唆しているようで興味深い。
(中島 駆)