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インキュベーションの虚と実

“起業ありきで多産多死”の現状を打破する
異色メンター・小澤隆生のインキュベート法

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第34回】 2013年9月2日
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 そして、人や組織をどう強化するかについてだ。古川氏は、人の採用など組織体制全般について、小澤氏からアドバイスを受けたという。人の採用はもっとも経験が必要で、かつ事業が成長するか否かを左右する重要な分野であるため、「未熟な自分だけではできなかった。とても助かった」と古川氏は言う。

 最後に資金調達だ。これは次にスターフェスティバルと併せて述べる。

 資金調達では、小澤氏は経験のない古川氏を教育するとともにグイグイ引っ張った。古川氏が「3000~5000万円の資金調達をしたい」と言うと、「最低一億、目指すは3億だ」と、先述したように小澤氏は古川氏ら経営陣の目線を高くさせ、リードした。

 小澤氏は個人的なネットワークを最大限活用し、ベンチャーキャピタル4社を古川氏に紹介した。小澤氏がハウツーサイトの存在意義と可能性を説き、古川氏がビジネスプランを説明するという二人三脚のプレゼンテーションを繰り返した。

 ファイナンスの知識も、経験のない起業家へ教え込んだ。例えば、普通株では会社の評価額が抑えられるため、優先株を使ったストラクチャーを投資家と検討していた時、小澤氏がその意味や妥当性を古川氏にアドバイスした。

 「知識も経験もないから、最初は全く分からない。騙されてるんじゃないかと思いますよね。こちらの立場で教えてくれる人がいたから、あのラウンドが成立できたのだと思います」と古川氏は言う。2010年11月にクロージングし、結局3.3億円を調達することができた。この7月の約2億7000万円の資金調達でも、小澤氏は会社の評価額などにについてアドバイスした。

 岸田氏も、資金調達で小澤氏の世話になった。スターフェスティバルはデルやシスコ・システムズのように、売掛と買掛の差がマイナス、つまり運転資金が要らないビジネスモデルであり、初年度から黒字で、資金調達が不可欠ではなかった。

 しかし、赤字にしてでもダッシュをかける時期を迎えたと、立ち上げから3年余りの2012年8月にグロービス・キャピタル・パートナーズとグリーベンチャーズから2.5億円を調達した。

 投資家を小澤氏から紹介してもらい、対応は岸田氏が担ったのだが、話した内容ほか逐一情報を小澤氏に共有してアドバイスを乞うたという。「言葉からして分からない、全く不案内な資金調達は、自分だけではどうにもならなかった」と岸田氏は言う。直近の10億円の調達でも、小澤氏からアドバイスをもらって成功に漕ぎ着けたという。

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本荘修二

新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Ventures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。「エコシステム・マーケティング」など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

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