前期1010億円の構造改革損失を計上、円安の追い風もありV字回復で、久々に海運トップに返り咲く商船三井。しかし、関連会社の第一中央汽船が3度目の危機に直面している。
前期1788億円と、過去最大の最終赤字を計上した商船三井。過去に踊った海運バブルのツケを清算したことによる。
バブルが発生したのは、鉄鉱石や石炭などを運ぶドライバルク(ばら積み)船だ。最も大型のケープサイズの用船料(1日当たりのレンタル料)は、もともと7000~2万4000ドルで推移していたが、2003年ごろから急浮上し、08年6月のピーク時には23万ドルをつけた。ところが、リーマンショックを境にバブルは崩壊、今春は5000ドルを割っていた。
バブル末期に高値で発注したり用船契約を結んだ船は、足元の船荷契約との間で逆ザヤが生じており2期連続赤字の元凶となった。
そこで、商船三井は3期連続の赤字を回避すべく、荒療治に出た。
前期末(13年3月)にドライバルク船130隻の船価や用船契約を時価に見直すことで、事業構造改革費用1010億円を計上し、「損失を先食いした」(アナリスト)のである。事業構造改革による経常利益の押し上げ効果は400億円。これで、「現在のようなどん底の市況でも利益が出るようになった」(田邊昌宏・商船三井取締役常務執行役員)。
さらに、ドライバルク船、自動車輸送船、タンカーの減価償却期間を15年から20年に延長したことで、年間の減価償却費が約100億円減少した。減価償却期間については、「以前から実態に合うよう期間延長を検討していたが、事業改革のタイミングで実施した。これで業界標準になった」(田邊常務)。そのほか、減速航海をすることで燃油消費を節約するなど、地道なコスト削減を実施している。
追い風となったのは、円安だ。商船三井は、1円の円安で20億円の増益となるため、今期は310億円の利益改善が見込まれる。
これらを積み上げると、今期の利益改善は前期比で900億円近くなる(図(1))。
今期、久々にライバルの日本郵船、川崎汽船を抑えて、大手3社で利益額トップに立つ見通しだ。