筆者が住んでいるシリコンバレーで走っている乗用車は輸入車が圧倒的に多い。トヨタ、ホンダ、ベンツ、BMWの4社でシェア6-7割を占める。米国のビッグ3(GM、フォード、クライスラー)のシェアは1割あるかどうかという状況である。ただ、これは乗用車の比率であり、トラック等の商用車になるとビッグ3はまだまだ強いが。

 7年ほど前にデトロイトの友人宅を訪ねた時にびっくりした。あまりにアメリカ車が多いのである。シリコンバレーとはまったく違う風景である。むしろ輸入車を見つけるのに苦労した。それもそのはず、デトロイトはビッグ3が本社を構えるアメリカ車の本拠地なのだ。忠誠心に富む従業員はわき目も振らずに自社の車に乗っていた。

 それが今では大きく変わった。路上を走っている車の6割は日本車になった。アメリカ車は少数派になってしまった。売れない車を作り続けたGM、フォード、クライスラーは、どんどん市場の片隅に追いやられてしまった。デトロイトでビッグ3に勤める人たちも、いまは輸入車を選択しているのだ。

 そのビッグ3が今存亡の危機に立たされている。特に状況が深刻なのが、世界最大の自動車会社GMなのである。米国市場でのシェアはこの42年間に、53%から20%に低下した。GMの凋落ぶりは決算にもはっきり現われている。

決算数字が示すGMの凋落

 GMの長期的な凋落は、(1)車種の絞り込みを怠ったこと、(2)小型車の開発に遅れたこと、(3)燃費効率のよいハイブリッド車の開発に遅れたこと、(4)7000社ともいわれるディーラーを州の規制等の関係で整理できなかったこと、(5)組合の力が強く退職者への年金が重い負担となっていること、(6)従業員の医療保険への会社負担も重い負担になっていること等、いくつかの要因が重なって引き起こされている。

 こうした中で、今年後半から金融危機が発生した。新車販売の9割はローンで行われるが、銀行の融資と傘下の金融会社の資金繰りが逼迫してきたことが、販売台数の急速な落ち込みに繋がった。10月の販売台数は前年同月比45%の大幅減少になった。新車が売れないことで手元現金も乏しくなり、このままの状況が続けば今年末から来年初には資金が枯渇する状況に追い込まれている。