8月21日に、医療や介護などの社会保障の大まかな改革項目とスケジュールを示した「プログラム法案」が閣議決定された。医療分野では、来年4月から70~74歳の医療費の窓口負担の引き上げが示されている。
今月9日の厚生労働省社会保障審議会医療保険部会でも、「70~74歳の窓口負担については結論を得ている」として、引き上げは既定路線のようだ。
70~74歳の医療費の窓口負担は、小泉・自民党政権下の2006年に引き上げることが決められた。しかし、翌年の参院選で自公政権が大敗。高齢者の票離れを恐れて、実施が見送られた。その後、民主党政権下でも、何度も引き上げが俎上にのぼったが、政治的理由で1割に凍結されたままになっていた。
だが、この特例措置のために、年間2000億円の税金が穴埋めに使われている。「負担増を先送りすれば、若者世代にツケを回す」「法律で決まったことなのだから速やかに引き上げるべき」といった声も上がっており、引き上げは懸案事項となっていたのだ。
たしかに、70~74歳の窓口負担を引き上げれば、予算措置は必要なくなるので、一時的には公的支出を削減できる。だが、長期的には医療費の抑制どころか、反対に国庫負担の増加につながる可能性があるのだ。
来年4月以降に70歳になる人から
窓口負担が2割に引き上げられる
1973年(昭和48年)は福祉元年と呼ばれ、会社員の扶養家族の医療費の自己負担割合が5割から3割に引き下げられたり、高額療養費制度が作られたりした。そして、高齢者の医療費が無料になったのも、この年だった。
だが、窓口負担なしで医療を受けられる老人医療費支給制度は、病院や診療所の待合室をサロン化させ、高齢者の医療費を大幅に増加させることになった。そのため、医療機関の適正利用を促すために、1983年に入院や通院時の定額負担を導入。2001年から窓口負担は定率1割となり、現在まで続いている(現役並み所得者は、2002年から2割、2006年から3割)。