日本プロ野球史を塗り替えるふたつの偉大な記録が達成された。ひとつは東北楽天・田中将大の連勝記録であり、もうひとつは東京ヤクルト・バレンティンのシーズン本塁打記録だ。

 田中は13日のオリックス戦で完投勝利。今季無傷の21勝目をあげた。また、シーズンをまたぐ連勝記録は25になる。これまでのNPBの開幕連勝記録は15、同一シーズン連勝記録は20、シーズンをまたぐ連勝記録も20。これをすべて上まわり、さらにMLBの連勝記録(開幕連勝=19、同一シーズン連勝=19、シーズンまたぎの連勝=24)も超えた。前人未到の連勝記録を更新中なのである。

 一方、シーズン本塁打日本記録55号に並んでいたバレンティンは、15日の阪神戦であっさり2本を打ち、1964年の王貞治(巨人)、2001年のタフィ・ローズ(近鉄)、2002年のアレックス・カブレラ(西武)が持つ記録を更新。57号まで伸ばした。

有無を言わせず記録を更新
バレンティンの凄さと王氏の潔さ

 長年、NPBのシーズン本塁打記録は55号が上限といわれてきた。国民栄誉賞第1号のヒーロー王貞治氏が持つ記録であり、神聖にして犯すべからざるものという認識があったからだ。ローズにしてもカブレラにしても、更新がかかった時は相手投手から勝負を避けられ、55号の日本タイ記録止まりだった。

 が、今季のバレンティンは驚異的なペースで本塁打を打ち、20試合を残す時点で日本タイに並んだ。勝負を避けるという姑息な操作を許さないゾーンに自らを持って行き、有無を言わせず記録を更新したのである。

 これに対する王氏(福岡ソフトバンク会長)のコメントもよかった。自分の記録が抜かれた悔しさなど微塵も見せず、バレンティンを称賛し「この数字がどこまでいくのか、ファンとともに楽しみたいですね」と語った。プロ野球OBの中には王氏の記録が外国人選手に抜かれるのは面白くないと思っている人もいるようだが、王氏は自ら記録更新を気にせず受け止めることで、そうした意見を封じ込めたわけだ。