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家庭用ゲーム機は「オワコン」なのか?
コアユーザー層と籠城するソニーのプレステビジネス

小山友介 [芝浦工業大学システム理工学部教授],石島照代 [ジャーナリスト]
【第41回】 2013年9月18日
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コントローラーのDUAL SHOCK3と並べるとコンパクトさが際立つPS Vita TV (c)2013 Sony Computer Entertainment Inc.既存のSTBにない使いやすいインターフェイスが特徴 (c)2013 Sony Computer Entertainment Inc.

 PS Vita TVは、一言で言うならSTB(セットトップボックス)である。このSTB、つまり「TVにつなげてWeb閲覧や各種サービスを受けられる端末」は様々な企業が何度もチャレンジしては失敗を繰り返している分野である。現在でもアップルのApple TVやグーグルのChromecast、携帯キャリア各社のアンドロイド端末などが出ているが、決定版となるハードは存在していない。

 PS Vita TVは既存のSTBにないゲーム機ならではの使いやすいインターフェイスに加えて、nasneと連携させた「圧倒的に使いやすい録画・再生機能」や本来のゲーム機としての「質の高いゲームが遊べる」という2つの特徴となる機能を持っており、STBの決定版となる可能性がある。

 ネットワークレコーダー&メディアストレージ「nasne」の内蔵ハードディスク1TB版の発売、Vita用のTORNEの完成度の高さなどから考えると、PS Vita TVは「PS4発売後、PS4版TORNEが発売されるまでのnasneの操作端末」としての役割を期待されているのだろう。PS Vita TVはPS4のゲームを遠隔で遊ぶことも可能なので、PS4発売後はPS4をリビングに置き、PS Vita TVは別の部屋に置いて使うことも可能である。PS4発売後も無駄とならない設計はさすがの一言だ。

新型PS Vitaはビジネス的に高評価
有機EL不採用は意見が分かれる

 ここまでは、ソニーの発表に関して市場分析を中心に行ってきたが、最後に業界内の反応に少しだけ触れる。

 まず、市場施策に関してはおおむね受け入れられているようだ。ある業界幹部は「iPhoneも、2DSもしかりで、廉価版ビジネスは踏み込まねばいけないトレンドになっている。新型PS Vitaは初期費用だけ見れば実勢価格とあまり変わらないが、1GBメモリカード内蔵ということで結局は下がっている。そういうわけで、廉価版ビジネストレンドをソニーがキャッチアップできているという点に関しては評価したい。

 2DSが3Dをあきらめた廉価版なら、新型PS Vitaは有機ELをあきらめた廉価版なんだろうね。でも、それもユーザーからすれば、あきらめられるんじゃない? やっぱり、箱を開けたらすぐ遊べる方がいいものね、いろいろ買わない方がいいでしょ?」と語った。

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小山友介
[芝浦工業大学システム理工学部教授]

1973年生まれ。芝浦工業大学システム理工学部教授。2002年京都大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京工業大学助教等を経て現職。東工大時代に経済シミュレーション研究に従事、そこで学んだコンピュータサイエンスの知識を生かしてゲーム産業研究を行なう。専門はゲーム産業を中心としたコンテンツ産業論と社会情報学。2016年6月末に『日本デジタルゲーム産業史』 (人文書院)を刊行。

石島照代
[ジャーナリスト]

1972年生まれ。早稲田大学教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年からゲーム業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。「コンテンツの配信元もユーザーも、社会的にサステナブルである方法」を検討するために、ゲーム業界サイドだけでなく、ユーザー育成に関わる、教育と社会的養護(児童福祉)の視点からの取材も行う。Photo by 岡村夏林

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ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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