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インキュベーションの虚と実

お行儀が良すぎる今の起業家へ送る至極の提言!
「現実歪曲空間を放ち、圧倒的世界一を狙え!」
——国光宏尚(gumi社長)×小林清剛(前ノボット社長)×宮澤弦(ヤフー検索事業責任者)鼎談

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第37回・最終回】 2013年10月21日
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国光 僕はビジネスをやっているからには、やっぱり一位をとりたい。でも、言えない空気はある。「なんで孫さんやジョブズに負けなきゃいけないんだよ」とはなかなか言えない(笑)。今の起業家は「会社のビジョンはこうで、社会に貢献していたい」って言いがち。俺は世界一になりたい。

 なんていうか、起業家のコミュニティにはスポーツの世界にあるようなピュアさがないんだよね。陸上のウサイン・ボルト選手に「なんで、オリンピックで金メダルとりたいの?」って聞かないでしょ。水泳の北島康介選手に「金メダルじゃなくて銅メダルでいいよ」とは、誰も言わない。みんな、やるからには世界一を狙っている。起業家にはこれがない。 

小林 僕は「世の中を良くしたい」っていう起業家よりも、「絶対に1位になりたい」っていう起業家の方が好きですね。

国光 「世のなかを笑顔にする」じゃ、ぼんやりする(笑)。皆、世界一を目指す気持ちを持っていないと。ハングリーさ、負けず嫌いが少ないのかも。新聞の就職人気ランキングなんて、上位にくるのは銀行とか保守的なところばっかり。

小林 最近の起業家のなかには、社会問題を解決するために起業する社会起業家をロールモデルにしている人が多いですよね。でも、うまくいっている社会起業家だって、まず第一にお金を稼いで社員を雇用して、それで社会を良くしている。この優先順位が大切だと思う。

実際は白でも黒と言い切る
現実歪曲空間が事業を育てる

宮澤 孫さんなら1位じゃなくて、「圧倒的1位」じゃなきゃ満足しないって言うよね。孫さんは、異様な空気感を持っている。なんていうか、現実歪曲空間を持っているよね。絶対に俺を信じろという、すごい力がみなぎってる(笑)。

小林 未来を言い切っちゃうことも重要ですよね。まるでタイムマシンで未来を見てきたように「絶対にこうなる」と。実際は白でも黒と言い切っちゃうような。あと、不可能なことでも自分にはできると思いこませる。そうやってすごい力で回りの人を巻き込んで事業を進める人が、事業を大きく育てられるんだと思う。

宮澤 天才型で現実歪曲空間を持ってる人は、秀才型の素地も持っている。ロジカルに既存のビジネスを変革させるスキームを持った上での、天才型のアプローチ。だから説得力が全然違う。

小林 失敗しても、成功するまでやり続けることも大事ですよね。

国光 孫さんって、携帯電話事業以外のビジネスは屍が多い(笑)。COMDEX 、ナスダック・ジャパン、あおぞら銀行って、どうなってしまったのって思う。でも徹底してやり切ってしまう。挙げ句の果てに、こちらが人生を懸けて世界制覇に挑んでいるモバイルゲーム業界を、片手間でひっくり返しにくる(笑)。

 子どもも、落書きを怒られるのと、うまいねと褒められるのとじゃ、書くぞーという気持ちが違う。日本は、挑戦しちゃダメという空気感があって、これを変えていかなきゃ。それで世界一を目指す起業家が増えていけば、日本のスタートアップに関わる人たちも変わっていくと思う。

宮澤 世界1位の企業が多ければ多いほど、良い国になって行くと思う。なんでもいい、ネジでも薬でも。

小林 足りないのはロールモデルだけですよね。日本と世界を代表する起業家が増えればいい。

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本荘修二

新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Ventures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。「エコシステム・マーケティング」など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

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