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インキュベーションの虚と実

お行儀が良すぎる今の起業家へ送る至極の提言!
「現実歪曲空間を放ち、圧倒的世界一を狙え!」
——国光宏尚(gumi社長)×小林清剛(前ノボット社長)×宮澤弦(ヤフー検索事業責任者)鼎談

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第37回・最終回】 2013年10月21日
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M&Aを失敗しない条件
独立性とインセンティブ

筆者 M&Aの課題と今後についてどう思うか?

小林 KDDIは、ノボットを買収して、買収がやりやすくなったと思う。最近、KDDIの子会社のメディーバがスケールアウトを買収したけど、被買収側のスケールアウトにとっては、僕みたいなスタートアップを売った経験者が買収側にいるのはよいこと。やはり被買収側の経営者や社員のモチベーション維持とか、実際に経験しているから。メディーバは買収した後、被買収側の人を活かすことが以前よりできていると思う。

宮澤 大企業のやり方にすべて合わせさせないことと、キーマンのやる気をキープすること、この二つはすごく大事。買収される会社の社長は下手すると買収後は一気につまらなくなってしまうことがある。「いま、オレがやらなきゃ減益だ」「オレがなんとかしないとライバルに負ける」とか、そういう危機感があれば頑張れる。買収する側は買収される側の創業者と向き合って、どうしたいか話をして、いままで以上の役目を任せることが重要だと思う。

小林 お互いがハッピーになることはすごく難しい。KDDIのノボット買収では、ウチのアドネットワークをすぐメディーバに統合して、オフィスもメンバーも、すぐに一緒にした。大企業に買収されるとベンチャーのカルチャーが壊れてしまうことが多いから、日本では独立性を維持するのがいいと思う。自分としては、スケールアウトの買収などで役に立ったものの、反省点も多い。

宮澤 大企業は事故率を下げるのも大事なKPI。管理部門の人と現場の担当者ではどうしても温度差がある。現場はベンチャーといっしょに、どんどんビジネスを加速したいからいつものやり方と違うイレギュラーを認めてよと言うことがあるんだけど、事故率を下げることを第一に考える管理部門は許可しない。そうすると、せっかくの買収効果がなかなか出ない。

 マネジャー級の人が、「僕が買収したベンチャーを責任持ってみます。失敗したら評価下げてくれ」くらい言わないと、大企業がベンチャーを買収して、ビジネスをドライブしていくことは難しい。

小林 それはすごく分かりますね。KDDIやメディーバの人たちはみんな協力的だったけど、やはりKDDIのルールがすごく厳しかった。ノボットのようなベンチャーの意思決定のプロセスに合わなかった。

国光 買収してもオフィスを一緒にせず、評価制度も決裁権も分けて、独立性をキープするという方法もあるよ。評価とインセンティブを明確に示して、テンションを下げさせない。起業家はモチベーション・ジャンキーだから、むりやりでも目標設定するのが重要。

宮澤 米ヤフーはアプリの責任者は被買収企業の創業者だった。最近はけっこういいアプリが出てきている。

小林 買われた側が、買う側にまわるっていうことが、M&Aをうまくいかせるコツかもしれない。

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本荘修二

新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Ventures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。「エコシステム・マーケティング」など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

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