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苦境を乗り越えたネットフリックス、
絶好調の要因は「オリジナル番組」にあり

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第267回】 2013年10月23日
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HBOから顧客を奪え!

 実は、ネットフリックスにはこうしたオリジナル番組の制作によって狙っていることがある。それは、ケーブルテレビの映画専門局HBOから視聴者を奪うこと。それだけではなく、番組を観るアメリカ人の習慣を覆すことだ。

 ネットフリックスでは「これこそが未来のテレビだ」と喧伝している。同社は、前回の四半期業績発表の際に長期的展望を文書で記し、その中でCEOのリード・ヘイスティングは、「線状に番組を放映する従来型のテレビはいずれなくなり、インターネットテレビのアプリによって取って代わられるだろう。その時、ケーブルやファイバーの帯域は、データ通信のために使われているはずだ」と宣言した。

 同時に、同社はもはやレンタルビデオ会社ではなく、「映画とテレビのオンデマンド配信会社」「映画とテレビのネットワーク会社」と称するようになったのだ。

 HBOは40年の歴史を持つケーブルテレビ局で、映画専門。豊富な映画セレクションを観たい人々は、ベーシックなケーブル契約も含めて最低でも毎月50ドルほどの契約料を払ってきた。

 しかし、ネットフリックスやフールーなどのオンラインテレビの人気によって、ケーブルテレビの契約者数は下降線を辿っている。2013年は有料テレビの契約数が前年度比で初めて減少し、2012年度の1億90万世帯から1億80万世帯になるという。加えて、過去3年でアメリカでは320万世帯が増えているにもかかわらず、有料テレビの契約数は25万しか増えていない。ケーブルテレビ、衛星テレビなどの有料テレビ離れが進行しているのだ。

ネットが「テレビ化」する?

 ことHBOについて言えば、アメリカ国内での契約ユーザー数は2870万人と想定され、ネットフリックスの3100万人にとっくに抜かれていると分析するアナリストもいる。

 そしてこの動きを加速化するのが、ネットフリックスのオリジナル番組だ。今年2月から「ハウス・オブ・カーズ」の配信が始まったが、ネットフリックスはその四半期で契約ユーザーを新たに300万人増やした。同社は、来年はオリジナル番組制作に2倍のコストをかける予定という。

 1本ずつ完結する映画だけでなく、毎週観られる連続のテレビ番組を作ったことで、ネットフリックスは視聴者を新時代のテレビへ導く扉を開けた。アメリカでは、「テレビのネット化」ではなく「ネットのテレビ化」があっという間に起ころうとしているのだ。

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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

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