私事で恐縮だが、第50回コラム(輸出型企業の円高限界点編)で、かつてダイヤモンド社の経済小説大賞へ応募したことがある旨を述べた。最終選考までは残ったものの、大賞を受賞するには至らなかった。
その原稿では、業績悪化に苦しむ上場企業が、起死回生策として、「負ののれん」を用いた「合法的な粉飾決算」に手を染める手法を描いた。「負ののれん」が、場合によっては悪用される可能性があるという思いは、今も昔も変わらない。
だから、視聴率低迷に喘ぐフジ・メディア・ホールディングス(フジHD)の連結財務諸表に、300億円を超える「負ののれん」を見たときは、心底驚いた。フジHDは、李下に冠を正して「禁断の実」を手にしたのかと。
筆者は「文章だけの分析」を好まない。客観的な解析結果を示しながら、今回はこの問題を検証してみたい。
最初にフジHDについて、本連載で再三利用しているタカダ式操業度分析の時系列推移を〔図表 1〕に示すところから話を始める。
〔図表 1〕は、タカダ式操業度分析(時系列推移)と呼んでいるものであり、営業利益ベースで描いた。この図表にある黒色の曲線は、実際売上高を四半期移動平均で描いたものである。
色付きの曲線の意義については、後掲の〔図表 3〕で説明する。タカダ式操業度分析では、黒色の曲線(実際売上高)が、赤色の曲線と青色の曲線で挟まれた「タカダバンド」に絡みつくように推移するとき、収益性が高い状態にある、と評価する。
〔図表 1〕では、10/12(2010年12月期)以降、タカダバンドが上放たれている。フジHDがこの時期以降、視聴率三冠王の座を日本テレビHD(日テレHD)に奪われ(日テレ三冠御礼)、広告収入の落ち込みによって収益力の低迷に悩まされてきたことと符合する。