ネット上でビジネスの重要な情報がやり取りされるようになり、その速度と信頼性の確保が企業にとっての課題となっている。インターネット上でコンテンツの配信を最適化する“見えない巨人”であるアカマイ・テクノロジーズの金融サービス担当チーフ・ストラテジストであるリッチ・ボルストリッジ氏に、昨今急増している金融機関向けサイバー攻撃の実態を聞いた。(取材・文/ダイヤモンド・オンライン編集部 指田昌夫)
インターネット上で動画を配信する際、サーバーにかかる負担を低減させパフォーマンスを向上させる分散ネットワークの「CDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)」で急成長を遂げたアカマイ・テクノロジーズ。創業は1998年だが、当時は動画の一般消費者向け配信で大量のアクセスが集中する際の、負荷分散と高速化サービスとして企業への導入が進められた。
その後、インターネットの爆発的な浸透により、動画に限らずビジネスのあらゆる情報がネットを介してやり取りされるようになるなか、アカマイのビジネスもB2Bの領域へ拡大してきた。いまや全世界のインターネット上で交わされる情報の30%弱は、アカマイのプラットフォーム上を通過しているという、知られざる「世界最大のネット企業」なのである。
セキュリティ確保のためには
異常な量の通信に対する備えが必要
通信データ量の増加への対応と同時に、データの安全性確保(セキュリティ)もビジネス上の大きな課題となっている。
「注目すべきは、サイバー攻撃の“量”と“頻度”の急増です」と語るのは、アカマイの金融サービス担当チーフストラテジストを務めるリッチ・ボルストリッジ氏だ。
まず攻撃のデータ量だが、あらかじめ乗っ取っておいた多数のコンピューターから、標的のサーバーに対して一斉に大量の意味のないデータを浴びせる「DDoS(Distributed Denial of Service attack)」という攻撃のスケールが日増しに大きくなっているという。
とくに昨今急増しているのが、金融機関向けの攻撃だ。アカマイの監視によると、「わずか数時間の間に、1つの金融機関へ数十ギガバイトのデータが送り込まれた事例も存在します。これは、小国1つが1日にネットで交わすデータ量に匹敵します」(ボルストリッジ氏)