上場企業の2013年9月中間決算は、大幅な利益増となった。これをもって、日本経済が回復していると言えるのだろうか?

 以下では、利益増加が経済の好循環をもたらしているとは言えないことを見る。

利益増は経済を改善するか?

 東京証券取引所第1部に上場する企業のうち、中間決算を発表した697社(集計対象の51.9%)についてSMBC日興証券がまとめたところによると、売上高が前年同期比10.3%増、営業利益は同39.7%増、純利益が同2.9倍となった(朝日新聞、2013年11月7日朝刊)。

 時事通信社は、11月6日までに開示された東証1部上場737社の中間決算を集計した。それによると、売上高は前年同期比10.4%増、経常利益は56.0%増となった。14年3月期(通期)の経常利益予想も30.4%増だ(時事通信、11月9日配信)。

 2013年3月期決算においては、全産業(2055社)の売上高は、597兆4245億円(前期比2.75%増)、営業利益27兆5749億円(3.10%増)、経常利益27兆6840億円(6.46%増)であった(東京証券取引所、決算短信集計結果)。これと比べると、大幅に改善していることがわかる。

 問題は、これで経済が改善するかどうかである。

 経済が改善するためには、賃金や雇用が増え、消費が増えることが必要だ。あるいは設備投資が増えることが必要である。

 しかし、現実には賃金が上昇していないことをこれまで述べてきた。また、設備投資も増えていない。なぜなのか?

 それは、今回の利益増がつぎの要因によってもたらされているからだ。

(1)円安

 円安が進行すると、原価が増えずに売上が増える。だから、少しの円安でも増益効果は大きい。

 しかし、これは企業にとってはまったく受動的なものである。したがって、賃金や設備投資を増やすことにはならない。

(2)リストラ

 電機産業では、リストラの効果が大きい。これは、事業や人員の削減だ。いわば、縮小均衡である。つまり、「賃金を上げたり設備投資を増やしたりしないから利益が増えた」ということなのである。