貿易統計の9月分と2013年度上半期(4~9月)分が発表された。

 9月分について見ると、輸出は対前年同月比11.5%の増加、輸入は16.5%の増加となった。その結果、貿易収支はマイナス9321億円となり、月1兆円の赤字に近づいた。このままのペースが続けば年間12兆円程度の赤字となるが、実際にそうなる可能性は高い。

 輸出は伸びているように見えるのだが、数量指数は3ヵ月ぶりの減少になった。つまり、円安下であるにもかかわらず、輸出数量が落ち込んでいるのである。

 13年度上半期分について対前年度同期比で見ると、輸出は9.8%の増加、輸入は13.9%の増加だ。

 貿易収支は4兆9892億円の赤字だ。赤字額が大きいだけでなく、継続していることも問題だ。貿易赤字は15ヵ月間続いており、第2次石油危機時の14ヵ月間を抜いて、過去最長となった。

 12年秋からは、顕著な円安が進行している。普通であれば、円安は貿易黒字を増大させるはずだ。しかし、実際にはまったく逆のことが起こっているのである。

 以下では、この背景を分析することとしたい。

貿易赤字拡大が意味するもの

 2013年度上半期の貿易収支は、年度半期ベースで過去最大の赤字だ。

 上に述べたように、9月分の貿易収支はほぼ1兆円の赤字であり、年間12兆円程度の赤字となる可能性が高い。

 図表1に見るように、リーマンショック前には年間10兆円ないしはそれ以上の黒字だった。それと絶対値でほぼ同額の赤字に転じるわけだ。(なお、図表1に示す国際収支統計の貿易収支と、貿易統計における輸出・輸入の差額の間には、定義の差に基づく差異がある)。

 これは、つぎの2つの意味を持つ。

 第1に経常収支が赤字になる可能性を否定できなくなった。10月8日に発表された国際収支状況速報では、8月の経常収支は1615億円の黒字だ。しかし、前年比では63.7%の減となっている。

 貿易収支の赤字を補うには、所得収支の黒字が増え続けなければならない。しかし、8月の国際収支状況速報では、所得収支は1兆2530億円の黒字で、前年比10.0%減だった。したがって、年間10兆~15兆円程度しか期待できない。他方で、貿易・サービス収支は1兆0392億円の赤字だった。

 こうした数字からすると、13年度の経常収支が赤字に陥る可能性は否定できない。