日本経済が順調な成長過程に入ったとの意見が多い。

 以下では、法人企業統計を中心としたデータを見ることによって、そうした見方が裏付けられるかどうかを検討することとしたい。そして、つぎの諸点を指摘する。

(1)景況感が回復しているのは円安で利益が増えたからである。ただし、それは、大企業に偏っている。

(2)売上高は増加していない。したがって、経済活動が拡大しているわけではない。

売上高は2011年7-9月期以降で最低

 法人企業統計によって売上高の推移を見ると、図表1のとおりである。

 4-6月期の売上高の対前年同期比は、全産業では、0.5%のマイナスとなった。製造業ではマイナス3.9%とかなり大きな落ち込みだ。

 製造業の内訳を見ると、輸送用機械が0.6%と僅かにプラスになったことを除くと、すべての業種でマイナスである。なかでも、はん用機械はマイナス26.2%、業務用機械はマイナス10.9%と大きく落ち込んでいる。

 非製造業はプラス1%になった。しかし、多くの業種でマイナスだ。例えば、情報通信業はマイナス6.7%、運輸業、郵便業はマイナス8.8%である。

 顕著にプラスになっているのは、不動産業である。ここでは、13.6%の伸びになっている。これは、4-6月期の法人企業統計の業種別売上高増加率では突出した数字である。

 これは、住宅建設が増えているからである。住宅建設が増えているのは、消費税増前の駆け込み需要だ。したがって、一時的なものであり、消費税引き上げ後の反動減は避けられない。事実、あとでみるように、不動産業の4-6月期の売上高は、1-3月期に比べると減少している。