自民党と公明党の税制協議会で、軽減税率の議論が真っ盛りだ。自民党の消極論の理由は、インボイスの導入に伴う事務負担の増加であるが、これに対して公明党は、インボイスなき軽減税率の導入を主張している。しかし、インボイスなき軽減税率は、消費税の一部が事業者の手元に残る「益税」を拡大し批判を招き、日本の消費税の信頼を損なう恐れがある。

自公税制協議会における議論の中身

 現在、与党(自公)の税制協議会で、軽減税率の議論が繰り広げられている。消費税率が10%に引き上げられる15年10月には、「軽減税率の導入を目指す」ことが本年初めの与党税調の決定事項となっており、12月中旬には結論を出す必要がある。

 8%への引き上げ時は、簡素な給付措置ということで、住民税非課税世帯への1万円の給付金が決定されているが、10%引き上げ時は、軽減税率か給付付き税額控除(低所得者に対する税の還付など)かのいずれかで対応することとなっている。

 軽減税率の問題点は、第44回で指摘したように、税収減をどうまかなうのか、軽減税率を導入しても逆進性はなくならないではないか(お金持ちも同様に恩恵を受けるので)という点と、事務負担の増加の3点である。今回は事務負担の増加に的を絞って論じたい。

 事務負担の増加というのは、以下のようなことである。

 消費税の納税義務者は事業者であるが、納付する消費税額は、売り上げに係る消費税額から仕入れにかかった消費税額を控除して(仕入れ税額控除)計算する。その際、欧州諸国では、請求書などに「消費税額」を記入することを「義務付け」ている。これにより、納入側(売手)側と仕入側(買手)の適用税率の認識を一致させることが可能になる、これがインボイスである。