軽減税率の議論と
インボイス
今回の税制改正議論で最後までもめた案件に、消費税の軽減税率導入がある。8%に引き上げる14年4月から導入すべきとする公明党と、10%段階あるいはそれを超える引き上げ時から導入とする自民党との攻防は、なかなか決着がつかず、最終的には、「消費税率の10%引き上げ時に軽減税率制度を導入することをめざす」という、結論先送りの決着となった。
筆者の考え方は、第17回、第34回に述べたとおり、軽減税率の導入は可能な限り我慢すべきであるということである。その理由は、軽減税率はお金持ちにより多く利益の及ぶ制度なので、逆進性対策にはならず「ばらまき税制」であること、それによって失われる税収をどこかで調達しなければならないこと、さらには、軽減税率導入に伴い莫大なコストや手間が国民、事業者、税務当局にかかることなどである。
一方で、今回の一連の議論を通じて、「インボイス」(取引の事実を証明する書類で、消費税額が別記されている)についていろいろ議論が行われたことは、今後のわが国の消費税制度を考えていく上で有益であった。しかし、「インボイス」の導入には反対しつつ、軽減税率は導入したいという虫のいい議論もあったやに聞く。
そこで、消費税制度と「インボイス」の問題について、改めて考えてみたい。
適正な納税を促す
インボイス制度
消費税が、フランスで考えだされてわずか数十年で全世界に広まった最大の理由は、所得税と比べて、大変タックスコンプライアンスが高い(脱税しにくい)税制だという点である。