高石あかりの「怪談語り」が上手すぎる!“プロっぽくなくていい”はずなのに…才能がコワい〈ばけばけ第120回〉『ばけばけ』第120回より 写真提供:NHK

今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラ(連続テレビ小説)に関する著書を2冊上梓し、毎日レビューを続けて10年超えの著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は、第120回(2026年3月20日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)

ついに来た『怪談』

 トキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)がためらいながら言う。

「ずっと読みたかった パパさんの本。だけん 学がない私でも読める本 書いてくれませんか」

 そのときの顔は笑顔。ちょっとにやにやしたような、特徴ある顔で、冗談冗談とごまかそうとする。よくも悪くもなにかと笑ってやり過ごすことに慣れた人の顔だ。

 トキのお願いに「すばらしい」とヘブンは刺激され、「終わり人間ない」と俄然(がぜん)元気になる。最近、自分は「終わり人間」だとばかり考えていたが、まだ自分にやれることが残っていたことに気づいたのだ。

 学がない人や子どもでも読める本。なによりトキが読める本。

「私たちも読めるかしらね」とフミ(池脇千鶴)。

「いよいよ『松野司之介物語』か」と司之介(岡部たかし)。

 違う、違う、そうじゃない。トキが読みたい本といったら――。

 ヘブンはピンとくるが、トキが口を塞ぐ。

 ひのふのみで声を合わせて

「怪談!」

 いやあ、ついに来た『怪談』。

『ばけばけ』は小泉八雲の偉人伝ではないと何度も何度も、制作統括がことあるごとに語っていたが、そういう情報を誰もが得ているわけじゃない。ただ、朝8時にテレビをつけて、あるいはNHK ONEで、ドラマだけを見ている人だっている。

 小泉八雲をモデルにした人が出ている話らしいとしか思わない人もいるだろう。そういう人たちは、有名な『怪談』がどんなふうに誕生したかがドラマになると思っていて、いつかいつかと待っていた、かもしれない。

 120回×15分放送して、やっと『怪談』にたどりついた。長かった。

 主題歌が流れる間、感慨にふける。